ルイーズ・ド・ベルジック

ベルギー王女ルイーズの生涯：愛とスキャンダル、そして破産

ルイーズ・ド・ベルジック（1858年-1924年）は、ベルギー王レオポルド2世と王妃マリー・アンリエットの長女として生まれました。オーストリア皇太子妃ステファニーは彼女の妹にあたります。ルイーズは、ザクセン＝コーブルク＝ゴータ公子でありコハーリ侯でもあったフィリップと結婚しました。この結婚は、レオポルド2世がプロイセンとの関係悪化を懸念して反対した一方、ハンガリー貴族の血を引くフィリップを好んだマリー・アンリエットによって実現しました。

しかし、ルイーズとフィリップの結婚生活は不幸でした。家父長的なフィリップの束縛を嫌ったルイーズは、ウィーン宮廷で贅沢な生活を送ります。彼女は妹ステファニーとオーストリア皇太子ルドルフの結婚を取り持つなど、宮廷生活に深く関わっていました。

転機は1895年に訪れます。ウィーンのプラーター公園で、ルイーズはオーストリア陸軍中尉のゲーザ・フォン・マッタチチュと出会いました。二人の間には激しい恋が芽生え、1897年には娘ドロテアを連れてマッタチチュと共に駆け落ちするという大スキャンダルを起こします。この事件はウィーン社会を震撼させました。

駆け落ち後、ルイーズとマッタチチュはパリ、カンヌなど各地を転々とする生活を送りました。息子のレオポルトは父親の怒りを恐れて、娘のドロテアも許嫁の説得によって、ルイーズの元を離れました。夫フィリップはマッタチチュと決闘し、負傷する事態にまで発展しました。

家族と絶縁状態となったルイーズは、贅沢な生活を続け、巨額の借金を負います。裕福な父を持つ彼女でしたが、破産し、1898年から6年間、禁治産者用の施設に収容されました。破産のきっかけは、マッタチチュがルイーズの妹ステファニーの署名を偽造して高額の宝石類を購入したためでした。マッタチチュは文書偽造罪で服役しますが、出所後、ルイーズを施設から救い出し、二人は再びパリで暮らすことになります。ルイーズとフィリップは1906年に離婚が成立しました。

1923年にマッタチチュが亡くなると、ルイーズは従弟であるベルギー王アルベール1世の妃エリザベートから住まいを与えられましたが、翌年、ルイーズ自身も亡くなりました。

ルイーズの生涯は、王族の身分と自由奔放な性格との葛藤、そして周囲との複雑な人間関係によって彩られたドラマチックなものでした。彼女の奔放な生き様は、当時ヨーロッパ社会に大きな衝撃を与えたと同時に、今もなお人々の興味を引きつけています。彼女の物語は、権力と富、愛と裏切り、そして個人の自由という普遍的なテーマを織りなす、歴史小説さながらの壮大なドラマでした。

子女:

レオポルト・クレメンス・フィリップ・アウグスト・マリア（1878年 - 1916年）
ドロテア・マリア・ヘンリエッテ・アウグステ・ルイーゼ（1881年 - 1967年） - シュレースヴィヒ＝ホルシュタイン公エルンスト・ギュンターと結婚

参考文献:

Louise de Belgique, Autour des trônes que j'ai vu tomber, Albin Michel, Paris, 1921
Olivier Defrance, Louise de Saxe-Cobourg : Amours, argent, procès, Racine, Bruxelles, 2000 (ISBN 2-87386-230-0)
Ouvrage collectif, Louise et Stephanie de Belgique, Le Cri, 2003 (ISBN 2-87106-324-9)
Comte Geza Mattachich, Folle par raison d'État : la princesse Louise de Belgique. Mémoires inédits du comte Mattachich, 1904
* Dan Jacobson, All for Love, Hamish Hamilton, Londres, 2005 (ISBN 0241142733)

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