ルイーズ・ブルックス

ルイーズ・ブルックス：ハリウッドの反逆児から永遠のルルへ

ルイーズ・ブルックス (1906-1985) は、アメリカ合衆国の女優、ダンサーです。1920～30年代、ハリウッド黄金期を象徴する存在でありながら、その奔放な生き様と、時代の先を行く演技で、多くの映画ファンの心を掴みました。本稿では、彼女の波瀾万丈な生涯と、映画史における大きな影響について考察します。

幼少期とキャリアの始まり

カンザス州で弁護士の父と芸術家の母の元に生まれたブルックスは、幼少期に性的虐待という辛い経験をしました。この体験は、彼女の人生観やキャリアに深い影を落とすことになります。ウィチタへの転居後、ブルックスは1922年にデニショーン・モダン・ダンス・カンパニーに入団。ルース・セント・デニスやテッド・ショーンらといった著名なダンサーらと共演する中、才能を開花させました。しかし、セント・デニスとの確執から解雇され、その後は『George White's Scandals』やジーグフェルド・フォリーズといったブロードウェイの舞台で活躍。1925年には、チャールズ・チャップリンとも関係を持つなど、華やかな世界に足を踏み入れました。

ハリウッドでの活躍とヨーロッパへの旅

1925年、フェイマス・プレイヤーズ・ラスキー・スタジオと契約したブルックスは、数多くのサイレント映画に出演。アドルフ・マンジューやW・C・フィールズといったコメディアンと共演する作品も多く、軽妙洒脱な演技で人気を集めます。1928年の『港々に女あり』でヨーロッパに注目されると、彼女は、ハリウッドを離れ、ドイツ表現主義の巨匠G・W・パープスト監督のもとで映画製作を行うためヨーロッパへ渡ります。

パープスト監督作品『パンドラの箱』でのルル役は、ブルックスの代表作として知られています。この映画は、当時の性風俗や社会批判を率直に描いた衝撃作であり、ブルックスの演技は高く評価されました。その後も『淪落の女の日記』『ミス・ヨーロッパ』といった問題作に出演し、時代の先をゆく女優として名声を高めました。

挫折と再評価

しかし、トーキー時代の到来とハリウッドの体制への反発から、ブルックスはハリウッドでの活動は減少。経済的な困窮に陥り、ナイトクラブでのダンサーや販売員などを経験。1938年に女優業を引退します。

その後、晩年には回想録『ハリウッドのルル』を出版。1950年代以降、フランスを中心に彼女の作品が再評価され始めると、彼女は再び脚光を浴びることになります。映画史家との交流を通して、映画界に大きな影響を与えた、重要な女優として、その功績は再認識されていきます。

私生活と遺産

ブルックスは、2度の結婚生活を送りましたが、子供には恵まれず、生涯独身を貫きました。彼女は金銭の浪費家でありながら、友人や知人に対して寛大であったことでも知られています。また、彼女自身の性的指向については不明な点も多いですが、多くの男性、女性との関係を持っていたとされています。

1985年に心臓発作で亡くなったブルックスですが、彼女の作品は現在でも多くのファンに愛され続けています。『パンドラの箱』を始めとした重要な作品は、DVDなどでも広く鑑賞可能であり、彼女の演技や生き様は、現代の映画界にも多大な影響を与え続けているのです。彼女のボブカットや、大胆な役柄は、後の映画や音楽、アート、文学などに影響を与え、永遠のアイコンとしての地位を確立しました。

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