ルソンの壺

ルソンの壺

『ルソンの壺』は、2007年4月8日から2021年3月21日まで約14年間にわたり、NHK大阪放送局が制作し、主に近畿地方に向けて放送された経済分野のドキュメンタリーおよびトーク番組です。関西で活躍する企業や経営者、あるいは地域に根差した新たな取り組みを行う組織や人物に光を当て、その挑戦や成功の背景にある知恵、困難を乗り越える力に迫りました。

番組名のユニークな由来は、安土桃山時代にフィリピンのルソン島との交易で富を築いたとされる堺の豪商、呂宋助左衛門にちなんでいます。これは、海を渡って新たなビジネスに挑み成功を収めた歴史上の人物になぞらえ、現代の関西経済の担い手たちの革新性やたくましさを描こうとする番組の姿勢を示しています。

番組はその歴史の中で名称や放送形式を幾度か変更しました。開始当初の2013年3月までは『ビジネス新伝説 ルソンの壺』として親しまれ、その後1年間は『新・ルソンの壺』となりました。このリニューアルを機に、単なる企業の成功事例だけでなく、公益法人やNPO、労働者協同組合といった、社会的な課題解決を目指す「社会的企業」や「コミュニティビジネス」にも焦点を広げ、多様な経済活動の形を紹介するようになりました。2014年4月からは、番組名が再びシンプルに『ルソンの壺』に戻り、放送頻度も原則毎週から毎月最終日曜日の月刊番組へと移行しました。同時に、それまで25分だった放送時間も40分に拡大され、より深くテーマを掘り下げることが可能となりました。

主な放送地域は近畿地方でしたが、時期によっては鳥取県や福井県をはじめ、岡山県、香川県、徳島県、三重県など、一部の隣接または関連性の深い地域でも放送されました。また、NHKワールドTVでも英語タイトル『Business Legends -The OSAKA WAY!-』として放送され、海外にも関西経済の一端が紹介されました（2012年3月で終了）。さらに、特定のテーマを扱った回やスペシャル版が、全国放送の枠やBS1などで放送されることもありました。

番組は当時のNHKの地域放送、特に近畿地方における複雑な編成の中で放送されていました。例えば、毎月最終日曜日は『さわやか自然百景』の本放送が近畿地方では行われず、この番組が編成されました。また、全国向け番組である『小さな旅』や、夜間の深夜アニメの再放送枠との兼ね合いで、放送時間や形式に影響が出たこともあります。地上デジタル放送では当初、スタジオ部分が4:3サイズでサイドバーが表示される形式でしたが、後に16:9サイズに対応していきました。

番組を進行する役割は、歴代のNHKアナウンサーが務めました。藤井彩子氏、上田早苗氏、田代杏子氏、小林千恵氏、渡邊佐和子氏、狩野史長氏などが担当しました。リポーターとしては堀あかり氏、小塚舞子氏、三倉茉奈・佳奈氏らが、ナビゲーターやコメンテーターとしては火山学者の鎌田浩毅氏、精神科医の名越康文氏、作家の山田真哉氏など、様々な分野の専門家や著名人が週替わりで出演し、多角的な視点を提供しました。ナレーションは長らく大阪局のアナウンサーが担当し、番組の雰囲気を支えました。

地域経済の「今」を伝え続けた『ルソンの壺』は、2021年3月21日の放送をもって終了。最終回はNHKプラスの「ご当地プラス」でネット配信も実施され、新たな形式での視聴機会も提供されました。番組の終了により、近畿地方における日曜朝の編成にも変化が生じました。

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