ルネ・アルディ

ルネ・アルディ：レジスタンスと疑惑の生涯

ルネ・アルディ（1911年～1987年）は、第二次世界大戦下のフランスでレジスタンス運動に参加した活動家です。オルヌ県モルトレの生まれで、フランス共産党員として、ナチス占領下のフランスでレジスタンス活動に従事しました。

アルディは、フランス国鉄（SNCF）や国鉄内のレジスタンス組織で活動し、特に「緑の計画」と呼ばれる作戦では、アンドレ・エルブロネルと共に連合軍の上陸作戦を支援するため、ドイツ軍の鉄道輸送網の妨害工作に携わりました。この活動は、占領軍の補給ラインを混乱させる上で重要な役割を果たしました。

しかし、彼のレジスタンス活動は、後に大きな疑惑の的となります。1943年6月、アルディはシャロン駅でゲシュタポと国防軍防諜部に逮捕されました。しかし、その後、カリュイール＝エ＝キュイールの会談への参加、そしてその場からの脱出劇など、彼の行動は多くのレジスタンス関係者の不信感を招きました。ベヌーヴィル将軍の指示で会談に参加したアルディは、逮捕の危機を脱したものの、この出来事は、彼に対する疑惑を深める要因となりました。レジスタンスリーダーの一人であるリュシー・オブラックは、アルディに毒入りジャムを送るという事件まで起こっています。幸いアルディはジャムを食べませんでしたが、この出来事は、アルディへの不信感がいかに大きかったかを示しています。

戦後、アルディは二度、対独協力（コラボラシオン）の容疑で訴追されました。1947年と1950年に行われた二度の裁判では、いずれも無罪判決が下されました。しかし、二度目の裁判は、カリュイール＝エ＝キュイールの会談でアルディと共にいたレイモン・オブラックらの告発がきっかけでした。これらの裁判は、戦後のフランス社会におけるレジスタンス活動への複雑な評価、そしてアルディを取り巻く疑惑の深さを象徴する出来事でした。

アルディの生涯は、レジスタンス活動における貢献と、その後の彼を巡る様々な疑惑、そして二度にわたる無罪判決という、複雑で興味深いものです。彼の活動は、占領下のフランスにおけるレジスタンス運動の実態、そして戦後における歴史的評価の難しさを改めて考えさせる、重要な事例と言えるでしょう。

関連事項

未必の故意
偽証の罪
法の不遡及
アンリ・オーブリ
リディ・バスティアン
フランス共産党

参考

* Bitter Victory (1957)

もう一度検索