ルノワール陽だまりの裸婦

概要

2012年に製作されたフランス映画『ルノワール陽だまりの裸婦』（原題: Renoir）は、印象派の巨匠ピエール＝オーギュスト・ルノワールの晩年を、彼と一人の若きモデル、そして息子のジャン・ルノワールの関係を通して描いた伝記ドラマです。ジル・ブルドスが監督を務め、ミシェル・ブーケがルノワールを、クリスタ・テレがモデルのアンドレ（通称デデ）を演じています。この作品は、ルノワールのひ孫が執筆した伝記を基に、彼の最晩年の傑作とされる絵画「浴女たち」が誕生する背景に隠された秘話を描き出しており、第65回カンヌ国際映画祭の「ある視点」部門で上映され、第86回アカデミー賞外国語映画賞にはフランス代表として出品されるなど、国際的な注目を集めました。

ストーリー

舞台は第一次世界大戦中の1915年、南仏コート・ダジュール。印象派を代表する画家オーギュスト・ルノワールは、すでに高齢で病に侵され、絵筆を握るのもままならない状態でした。さらに、最愛の妻に先立たれた悲しみに加え、兵役に就いていた次男ジャンが負傷したとの知らせを受け、深い失意の中にいました。そんなある日、彼の絵のモデルとして一人の若い女性が現れます。彼女の名はアンドレ、通称デデ。亡くなったはずのルノワール夫人からの依頼で来たと語る彼女の、輝くような若さと生き生きとした美しさは、ルノワールの中に再び創作への情熱の炎を灯します。彼はデデを新たなミューズとして、精力的に絵を描き始めます。

しばらくして、戦地で負傷したジャンが療養のため故郷に戻ってきます。彼はすぐに父の新しいモデルであるデデの魅力に惹きつけられます。父の絵画制作を手伝ううちに、ジャンとデデは互いに心を通わせ、やがて愛し合うようになります。女優を志していたデデは、当時まだ映画の世界に足を踏み入れたばかりだったジャンに、共に映画を作ろうと持ちかけます。偉大な父の影に隠れて生き、自身の進むべき道を見つけられずにいたジャンは、この申し出に心を揺り動かされます。

しかし、戦地で苦戦を強いられている戦友たちのことを思うと、故郷で穏やかに過ごすことに後ろめたさを感じていました。葛藤の末、ジャンは再び空軍に志願し、戦地へ戻ることを決意します。ジャンの突然の決断に、裏切られたと感じたデデは、モデルとしての仕事を放棄してしまいます。父オーギュストにとって、デデの存在がどれほど重要かを理解していたジャンは、出発前にデデを説得し、ルノワールのモデルに戻るよう促します。そして、愛する家族とデデを残し、ジャンは再び戦いの場へと赴くのでした。

キャスト

- ピエール＝オーギュスト・ルノワール: ミシェル・ブーケ
- アンドレ（デデ）: クリスタ・テレ
- ジャン・ルノワール: ヴァンサン・ロティエ
- クロード（ココ）・ルノワール: トマ・ドレ
- ガブリエル・ルナール: ロマーヌ・ボーランジェ

スタッフ

特筆すべきスタッフとして、画家ギィ・リブが挙げられます。彼はかつて贋作画家として活動していましたが、逮捕後に悔悟し、本作では絵画制作や技術指導を担当しています。

評価

本作は批評家から様々な評価を受けました。Rotten Tomatoesによれば、69件の評論のうち72%が肯定的で、平均評価は10点満点中6.54点です。批評家たちの総意としては、脚本やテンポに課題があるものの、その欠点を補ってあまりある豪華で美しい映像表現が評価されています。一方、フランスの映画レビューサイトAlloCinéでは、19のメディアによる評価の平均が5点満点中3.4点となっています。

この映画は、巨匠ルノワールの芸術家としての最後の輝きと、戦争という厳しい時代背景の中で揺れ動く家族の人間ドラマを、美しい映像と共に描き出しています。それは、画家とモデル、そして息子という三者の関係性を通じて、創作意欲と人生への渇望を問いかける作品と言えるでしょう。

出典

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外部リンク

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