ルノースポール・スパイダー

ルノースポール・スパイダーの概要

ルノースポール・スパイダー（Renault Sport Spider）は、フランスの自動車メーカーであるルノーが製造したスポーツカーで、同社のモータースポーツ部門であるルノー・スポールが手掛けました。このモデルは、1995年のジュネーブ・モーターショーで初めて公開され、1996年から市販が開始されました。ルノー・スポールのオリジナルモデルとしては初めてかつ最後の車となり、特に注目を集めました。

設計は、ルノーのデザイン担当上級副社長であるパトリック・ルケマンによって指揮され、アルミニウムスペースフレームとハニカム樹脂ボードからなる軽量のシャーシが採用されています。この構造により、スパイダーは軽快な走行性能を実現しました。エンジンには、ルノー・メガーヌ16Vから流用された2,000ccの直列4気筒DOHC16バルブエンジンが搭載され、｢パフォーマンス｣と｢楽しさ｣の両方を追求しています。エンジンは横置きに配置されており、サスペンションは前後ともにプッシュロッド式ダブルウィッシュボーンが使用されています。

このスパイダーは、フランス国内で行われたワンメイクレース「スパイダートロフィー」用の競技車両をもとにしています。一般公道での使用に適した仕様もなされており、標準的な保安部品が装備されていますが、快適装備や多くの安全システムは省かれています。特に特徴的なのは、フロントスクリーンが存在しない点で、代わりにエアロパーツが設置されています。そのため、スパイダーはスパルタンな設計想念を持ち合わせています。

初期のモデルにはフロントスクリーンがなく、「ソートバン（saute-vent）」という名称で知られる仕様が存在します。その後、フロントスクリーンを装備した「パラブリーズ（pare-brise）」というモデルも登場し、2つのタイプが用意されました。

実際の生産は、ディエップのアルピーヌ・ファクトリーで行われ、通常の生産ラインではなく、1日に4台の手作りという形で約1,700台が製造されました。特に注目すべき点は、日本市場においてもヤナセ傘下のフランス・モーターズを通じて100台が輸入され、全てパラブリーズ仕様で販売されたことです。

この車は、ただ単に高度な技術や美しさを追求しただけでなく、レーシングカーの特徴を兼ね備えたスポーツカーとして位置付けられています。ルノースポール・スパイダーは、ルノーのモータースポーツの哲学を象徴するモデルとして、今なお多くの自動車ファンから愛され続けています。特にそのシンプルな設計と真剣なレース志向が、多くのドライバーに刺激を与えています。これらの要素により、ルノースポール・スパイダーは自動車の歴史の中で特別な位置を占める存在になりました。

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