ルノー・フエゴ

ルノー・フエゴ

ルノー・フエゴ（Renault Fuego）は、フランスの自動車メーカーであるルノーが1980年から1992年まで生産・販売した自動車です。特に3ドアクーペとしてのスタイルが特徴的で、先行モデルにあたるルノー15および17の後継車種として市場に投入されました。

概要

1980年2月に正式発表されたフエゴは、当時のルノーの中核車種であったルノー18をベースとして開発されました。その設計思想はルノー18と多くの部分で共通しており、エンジンはフロントオーバーハングに縦置きされ、前輪を駆動するレイアウトを採用していました。サスペンション構造もルノー18と同様で、フロントにはダブルウィッシュボーン式、リアには3リンクのリジッドアクスルが用いられていましたが、フエゴではリアサスペンションにもスタビライザーが装備されるなど、クーペとしての走行性能に配慮が見られました。一方、当時の技術動向としては注目され始めていた4輪駆動システムについては、フエゴには設定されませんでした。

搭載されたパワーユニットは、発売当初から複数のバリエーションが用意されました。いずれも直列4気筒エンジンで、排気量1.4Lと1.6LのOHV（オーバーヘッドバルブ）仕様、およびより高出力な2L SOHC（シングルオーバーヘッドカムシャフト）仕様の計3種類からスタートしました。その後のモデルイヤーにおいては、エンジンの選択肢がさらに広げられました。1982年10月には2.1Lのディーゼルターボエンジンが加わり、燃料費を抑えたい顧客層へのアピールが図られました。続いて1983年には、パフォーマンス志向のモデルとして1.6Lガソリンターボエンジン搭載車が登場しました。さらに、モデルライフ後期の1984年から1985年にかけては、排気量を拡大した2.2Lエンジンもラインナップに加えられるなど、様々な市場のニーズに応じたエンジン展開が行われました。

デザイン

フエゴのスタイリングは、当時ルノーのデザイン責任者として移籍したばかりであったロベール・オプロンが初めて主導したプロジェクトの一つとされています。彼は独特の感性でフエゴに流麗なクーペボディを与えました。最大の特徴は、リアエンドに大きく開くハッチゲートと、そのハッチゲート全体がサイドウィンドウ部分まで回り込むようにデザインされた広大なガラスエリアです。これにより、後方視界の確保と個性的な外観が両立されていました。3ドアクーペというボディ形式は、スポーティさと実用性を兼ね備えたものとして提案されました。

販売と生産

発表直後の1980年から1982年にかけて、フエゴの販売は比較的堅調に推移しました。しかし、それ以降は販売台数が徐々に減少していく傾向が見られました。この販売低迷の要因の一つとして、車両の電気系統に関する信頼性の問題が指摘されています。具体的には、電気回路の設計に起因するショートなどの不具合が多発し、最悪の場合には車両火災に至るケースも報告されており、これがユーザーからの信頼を損ない、販売に影響を与えたと考えられています。

生産は当初、フランス本国やスペインで行われていましたが、販売状況の変化とともに生産体制の見直しが行われました。フランス（MCA工場）での生産は、後継車種となるルノー21が発表された1985年をもって終了しました。スペインでの生産も翌1986年には終了し、その後は南米のアルゼンチンとベネズエラに生産拠点が移管されました。南米市場向けに生産が続けられていましたが、最終的に1992年にこれらの地での生産も終了し、約12年間にわたるフエゴのモデルライフに幕が閉じられました。

車名

「FUEGO」という車名は、スペイン語で「火」を意味します。流れるようなクーペのフォルムや、時にはパフォーマンスモデルとして提供された性格にちなんで名付けられたのかもしれません。

ルノー・フエゴは、1980年代初頭のルノーが送り出したスタイリッシュなクーペであり、そのデザインやエンジンの多様性は注目されました。しかし、信頼性に関する課題を抱えつつ、生産拠点を移転しながらも約12年間製造が続けられ、ルノーの歴史に名を刻んだ一台と言えるでしょう。

（参考文献：自動車アーカイヴ Vol.14 80年代のフランス車篇, Gazoo名車館 1980年 ルノー フエゴ GTS などを参考に記述しています）

関連項目として、フランス車全般や、サッカー選手のディエゴ・マラドーナがルノー・フエゴGTA MAXを所有していたエピソードなどが挙げられます。

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