ルノー・RE60

ルノーRE60：1985年シーズンの苦闘と遺産

1985年、ルノー・スポールはF1世界選手権にRE60を投入しました。ベルナール・デュドとジャン＝クロード・ミジョーが設計したこのマシンは、前年モデルRE50の進化版でしたが、期待されたほどの成果を上げることはできませんでした。

ドライバーにはパトリック・タンベイとデレック・ワーウィックが起用されました。タンベイはポルトガルとサンマリノで3位表彰台を獲得する活躍を見せましたが、チーム全体としては低迷を極めました。フランスグランプリからは改良型のRE60Bが投入されましたが、完走率の悪化により、状況を改善することはできませんでした。

RE60の開発過程においては、前年末に主要スタッフ4名の離脱という大きな痛手がありました。これにより、チーム全体の体制は大きく変化し、開発作業にも支障をきたしたと考えられます。シーズン開幕前のテストでは、RE60がRE50より3.5秒も遅いことが判明し、ワーウィックは「ドライブすることは不可能」とコメントしたほどでした。

1985年シーズン、ルノーV6エンジンを搭載したチームの中で、ルノーワークスチームはロータスやリジェに大きく水をあけられました。ロータスはコンストラクターズランキング4位、3勝、71ポイントを獲得。リジェも6位で23ポイントを獲得し、ルノーワークスチームを上回る結果となりました。ルノーエンジンを搭載したティレルはわずか3ポイントにとどまりました。

ワーウィックは、前年に引き続きルノーと契約を結びました。ウィリアムズから移籍オファーを受けながらも、ルノー残留を選択したのです。しかし、この決断は後に大きな後悔の種となります。ウィリアムズはその後、ナイジェル・マンセルを獲得し、ホンダエンジンとの強力なタッグで圧倒的な強さを発揮。マンセルはF1で数々の勝利を挙げ、チャンピオンにも輝きました。一方、ワーウィックはルノーで勝利を掴むことができず、真に競争力のあるマシンをドライブすることはありませんでした。

RE60は、ルノーのワークス参戦第一期を締めくくるマシンとなりました。1986年はエンジン供給のみとなり、1987年と1988年はF1から撤退。その後、1989年からV10自然吸気エンジンの供給で成功を収め、2002年にはベネトンを買収し、ワークスチームとしてF1に復帰しました。

シーズン終了後、RE60は多くのスペアパーツと共に、フランスの小さなチームであるAGSに売却されました。AGSでは、RE60のパーツが1986年型JH21C、1987年型JH22、さらには1989年夏まで使用されたJH23にまで流用され、その技術が他チームの躍進にも貢献することになりました。

なお、1985年南アフリカグランプリは、南アフリカのアパルトヘイト政策に対する国際的な圧力を受け、ルノーはボイコットしました。これは、フランス政府の南アフリカに対する制裁の一環でした。RE60の開発、その活躍、そしてその後も、F1の歴史において重要な1ページを刻んだと言えるでしょう。

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