ルベーシュ

ルベーシュ：ソ連が生んだ沿岸防衛の要

「ルベーシュ」（ロシア語: Рубеж）は、ソ連で開発された沿岸自走ミサイルシステムであり、敵艦艇を沿岸から攻撃するために設計されました。このシステムは、P-15M「テルミート」対艦ミサイルを運用することを特徴とし、その機動性と破壊力で沿岸防衛において重要な役割を果たしました。

開発の背景

1960年代末、ソ連海軍はP-35ミサイルを搭載した「レドゥート」沿岸ミサイルシステムを使用していました。しかし、「レドゥート」はミサイルを1発しか搭載できず、より小型で多連装が可能なシステムの必要性が高まりました。そこで1970年、機械製作設計局「ラードゥガ」で新しい沿岸ミサイルシステム「ルベーシュ」の開発が開始されました。

システムの構成

「ルベーシュ」は、以下の主要な要素で構成されています。

自走発射装置3P51：MAZ-543大型トラックをベースに、ミサイル発射機と射撃管制システムを搭載。
ミサイルP-15M「テルミート」：射程距離を延伸した対艦ミサイル。
ミサイル輸送車両：ミサイルを輸送し、発射装置に装填。

オプションとして、S-300Pで使用される長射程レーダーも利用可能でした。

ミサイルの特徴

P-15M「テルミート」ミサイルは、P-15Uミサイルの改良型であり、射程が延伸されています。特徴的なのは、以下の点です。

翼の改良：翼長が延長され、安定性が向上。
Y字型操舵翼：弾体尾部に固定式の操舵翼を装備。
複合誘導方式：慣性航法装置とアクティブ・レーダー誘導または赤外線誘導シーカーを併用。

ミサイルは、発射重量2523kg、弾頭重量513kgで、威力は15kt。飛行高度は25m、50m、250mのいずれかに設定可能でした。

発射装置の機能

MAZ-543トラックに搭載された発射装置は、高い機動性を誇ります。車上にはレーダー「ガルプーン」を備えた管制室とガスタービン発電機が搭載されており、独立して目標を攻撃できます。「ガルプーン」レーダーは、ミサイル艇に搭載されたレーダーの派生型で、目標の捜索・捕捉に使用されました。

運用方法

「ルベーシュ」は、技術基地で準備と装填を行い、その後、沿岸の作戦帯へ移動します。展開後、レーダーアンテナを上げ、コンテナを発射位置に旋回させます。レーダーで目標を捕捉し、射撃計算を行い、ミサイルを発射します。

ミサイルはブースターによって加速され、巡航エンジンに点火後、主翼を展開します。慣性誘導装置によって所定のコースを飛行し、目標付近でシーカーが作動、目標を捕捉して突入します。目標への接近時には「急上昇」機動を行い、上空から攻撃します。

部隊編成

「ルベーシュ」の部隊は、通常、発射装置4基と輸送装填車両4両で構成され、1部隊あたり16発のミサイルを保有していました。

運用国

「ルベーシュ」は、ソ連をはじめ、ウクライナ、ユーゴスラビア、ブルガリア、東ドイツ、キューバ、アルジェリア、リビア、シリア、イエメン、ルーマニアなど、多くの国で運用されました。

その後

「ルベーシュ」は、ソ連崩壊後も一部の国で使用され続けました。より新しいシステムが登場したことで徐々に退役が進んでいますが、その設計思想は、現代の沿岸防衛システムにも影響を与えています。

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