ルワン王

ルワン王：スコータイの英雄伝説

ルワン王（プラ・ルワン）は、タイのスコータイ地方に伝わる伝説的な英雄です。11世紀初頭にスコータイの王に就いたとされていますが、スコータイ王朝が成立する以前の話であるため、その実在を証明する確証はありません。しかし、スコータイ王朝時代には王朝の先祖と位置づけられ、しばしばスコータイの王の代名詞として語り継がれてきました。ロッブリー地方にも同様の伝説が残されています。

伝説の誕生

物語は、チャンタラ・ラーチャー王とその妃スリヤー・テーウィーから始まります。ある日、チャンタラ・ラーチャー王が狩りで森へ入ると、そこで美しい女性に出会います。二人は親密な関係を結びますが、女性は自分がナーガ（竜族）であり、人間とは一緒に暮らせないと告げ、姿を消します。

その後、ナーガ女は身ごもり、一つの卵を産みます。彼女はその卵をサトウキビ畑に置き去りにします。その畑を耕していた老夫婦が卵を見つけ、大切に保管していたところ、ある日卵が割れて、中から玉のような男の子が現れます。老夫婦は驚きと喜びで、この子を大切に育てます。法師に占ってもらうと、男の子は高徳な前世を持っており、古い竹の新芽でゆりかごを作り、特別な印を描いて寝かせると良いと告げられます。その通りにすると、男の子は静かに眠るようになりました。

神通力を持つ少年

15歳になった男の子は、言ったことが現実になるという不思議な力を持っていました。老夫婦は彼をプラ・ルワン（「輝かしい高貴な者」の意）と名付けます。ある日、チャンタラ・ラーチャー王が宮殿の建設儀式を行っていた際、プラ・ルワンは「ここは我々のなわばりだ」と叫び、同時に柱が立ち上がり激しく震え始めます。これを見たチャンタラ・ラーチャー王は、彼が以前関係を持ったナーガ女の子供ではないかと気づきます。老夫婦から報奨金と引き換えにプラ・ルワンを引き取り、皇太子として育てます。

皇太子としての活躍

皇太子になったプラ・ルワンは、その神通力をいかんなく発揮します。当時のチャンタラ・ラーチャー王の国は水不足に悩まされており、クメールのインドラプラシュタ国の王パドマスリヤーマンに貢ぎ物を送ることで、インドラプラシュタ領内から水を引くことを許されていました。これに憤慨したプラ・ルワンは、父に貢物を止めるように進言します。父王もプラ・ルワンの言葉に誤りはないと判断し、その通りにします。これに対し、パドマスリヤーマン王は討伐隊を派遣しますが、プラ・ルワンの神通力と軍事力の前にはなすすべもなく、討伐を諦めざるを得なくなります。プラ・ルワンは初陣にもかかわらず圧倒的な戦闘力を示し、その名を轟かせました。

スコータイの王へ

父王の死後、プラ・ルワンはスコータイの王になったと伝えられています。彼の伝説は、スコータイ王朝の正統性を示すだけでなく、人々に勇気と希望を与える物語として、今日まで語り継がれています。

この伝説は、単なる物語としてだけでなく、スコータイ王朝の歴史と文化を理解する上で非常に重要な要素となっています。ルワン王の伝説は、スコータイの人々にとって、単なる英雄譚を超えた、深い文化的意味を持つ物語として捉えられています。

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