ル・コルビュジエの建築作品-近代建築運動への顕著な貢献-

ル・コルビュジエの建築作品群―近代建築運動への顕著な貢献―：世界遺産登録への道のり

20世紀の建築史に名を刻む巨匠、ル・コルビュジエ。彼の建築作品群は、近代建築運動に計り知れない影響を与え、世界遺産に登録されるにふさわしい価値を有すると広く認識されています。本稿では、17件の建築作品群が世界遺産リストに登録されるまでの経緯と、その意義について詳述します。

近代建築の巨匠、ル・コルビュジエ

スイス出身のル・コルビュジエは、「近代建築の五原則」を提唱し、近代建築運動を牽引しました。鉄筋コンクリートなど、新素材の活用による自由な建築デザインの可能性を追求し、機能性と美しさの調和を重視した彼の作品は、世界中の建築家に多大な影響を与えました。

世界遺産登録への挑戦：試行錯誤の過程

21世紀に入り、ル・コルビュジエ財団を中心とした世界遺産登録に向けた動きが本格化しました。当初はフランスを始めとした複数の国が参加し、彼の建築作品を網羅した23件を候補として推薦しました。しかし、2009年の世界遺産委員会では、「顕著な普遍的価値」を建築家個人の生涯と結びつけることに疑問が呈され、登録は見送られました。

その後、構成資産の見直し、推薦理由の再検討を経て、2011年には19件に絞り込んで再推薦しましたが、再び登録は見送られました。しかし、ル・コルビュジエの作品を世界遺産として評価する声は高く、大陸を跨ぐ大規模なシリアル・ノミネーションという点で高い評価を受けました。

2015年、3度目の推薦が行われ、その際にICOMOSから「登録」勧告を受けました。そして2016年、第40回世界遺産委員会において、ついに「ル・コルビュジエの建築作品―近代建築運動への顕著な貢献―」として正式登録されました。

登録された17物件：多様な建築表現

世界遺産に登録された17物件は、住宅、工場、宗教建築、都市計画など多岐に渡り、ル・コルビュジエの建築家としての生涯と多様な建築表現を反映しています。これらの建築物は、それぞれの地域的、文化的背景を踏まえつつ、彼の革新的な建築思想が具現化されたものです。

主な登録物件:

フランス: ラ・ロッシュ＝ジャンヌレ邸、サヴォア邸、ユニテ・ダビタシオン、ロンシャンの礼拝堂、ラ・トゥーレットの修道院など
スイス: レマン湖畔の小さな家、イムーブル・クラルテ
ドイツ: ヴァイセンホフ・ジードルングの住宅
アルゼンチン: クルチェット邸
ベルギー: ギエット邸
インド: チャンディガールのキャピトル・コンプレックス
* 日本: 国立西洋美術館

登録基準と評価

世界遺産登録基準のうち、(1)人類の創造的才能を表現する傑作、(2)ある期間を通じてまたはある文化圏において、建築、技術、記念碑的芸術、都市計画、景観デザインの発展に関し、人類の価値の重要な交流を示すもの、(6)顕著で普遍的な意義を有する出来事、現存する伝統、思想、信仰または芸術的、文学的作品と直接にまたは明白に関連するもの、の3つの基準を満たすと判断されました。特に、近代建築運動におけるル・コルビュジエの貢献とその影響の大きさ、そして彼の建築作品群が持つ普遍的な価値が評価されました。

登録を見送られた物件

登録に至らなかった物件も存在し、それらの建築的、歴史的価値を議論する上での重要な要素となっています。これらの物件は、登録基準を満たすには至らなかったものの、ル・コルビュジエの建築思想と創造性を理解する上で重要な役割を果たしていると言えます。

結論

「ル・コルビュジエの建築作品―近代建築運動への顕著な貢献―」の世界遺産登録は、近代建築運動の国際的な意義とル・コルビュジエの多大な貢献を改めて世界に示すものでした。その登録までの道のりは、世界遺産登録基準の解釈やシリアル・ノミネーションのあり方など、多くの課題を提起しました。この登録は、単なる建築物の保護にとどまらず、近代建築運動の歴史的意義を再確認し、未来への継承を促す契機となるでしょう。

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