ル・ノエル

宙出版がかつて発行していた漫画雑誌『ル・ノエル』は、女性読者を主な対象とし、特に歴史やファンタジーといった異世界を舞台にした恋愛漫画作品に焦点を当てた季刊誌であった。

この雑誌は、『Young Love Comic aya』の増刊という位置づけで、2017年4月に創刊された。定期刊行時は、毎年1月、4月、7月、10月の17日に発売されていた。雑誌の物理的な仕様としては、一般的な漫画雑誌に多いA5判で、ページを糸や針金を使わずに糊で綴じる平綴じ方式が採用されていた。

誌面に掲載された作品群は、女性読者の心に響くようなロマンチックなストーリーが中心であった。特に力を入れていたのが、プランタン出版が刊行する人気ライトノベルレーベル「ティアラ文庫」に収められた作品のコミカライズ版と、この雑誌のために特別に企画され、新たに描き下ろされた原作に基づいて制作された漫画作品であった。これらの作品は、魅力的な設定やキャラクター、そして心を揺さぶるドラマチックな展開によって、読者を独自の物語世界へと引き込んだ。こうした路線の明確さは、『ル・ノエル』の大きな特徴の一つであったと言える。

『ル・ノエル』に掲載された漫画作品の多くは、後に宙出版の女性向け漫画単行本レーベルである「ミッシィコミックスYLC DX Collection」シリーズとして単行本化され、雑誌を読めなかった読者や、単行本で手元に置きたい読者にも広く届けられた。これは、掲載作品の一定の人気を示すものであった。

しかしながら、『ル・ノエル』の歴史は、創刊から数年という比較的短い期間で終止符を打つことになった。2017年4月の創刊から始まり、定期的な刊行が続けられていたものの、2019年1月17日に発売されたvol.8を最後に、新たな号は現在に至るまで刊行されていない。この状況は、公式な発表はないものの、事実上の休刊、あるいは廃刊状態にあることを示している。

本来であればvol.9以降の誌面に掲載される予定であった作品の中には、雑誌の休刊に伴い、発表の場を失う危機に瀕したものもあった。しかし、それらの作品の一部は、宙出版が新たに立ち上げた電子雑誌「ぱちゅてる」へと掲載媒体が引き継がれることとなり、無事に読者の元へ届けられることになった。これは、雑誌の形は変われど、作品を生み出した作家や、それを楽しみにしていた読者にとって、喜ばしい出来事であったと言えるだろう。

この雑誌の誌面を飾った主な作家たちの中には、倖月さちの、七里慧、DUO BRAND.、竹内未来、田中琳、桜月ナナカ、白雪しおん、めぐみけい、みずの雪見、豆星ゆめ子、小鳥彩花といった、女性向け漫画や恋愛漫画の分野で活躍する多数の漫画家たちの名前が見られる。また、小説家として一文字鈴も作品を寄稿しており、バラエティ豊かな誌面を構成していた。彼らの筆致によって、読者は多種多様な歴史・ファンタジー恋愛の世界を体験することができた。

特に、誌面では多くの魅力的な連載作品が展開され、読者から支持を集めた。例を挙げると、DUO BRAND.が永谷圓さくら原作による『ただ今、蜜月中！　騎士と姫君の年の差マリアージュ』、倖月さちのが朝陽ゆりね原作を手がけた『残念王女の婚活事情』（※前後編として掲載）、田中琳の『黒薔薇の魔女は黄金の王子に奪われる』、白雪しおんによる『政略結婚の旦那様（仮）と恋を始めます。』、みずの雪見が神埼たわ原作で描いた『王子様に抱かれるという秘密』、豆星ゆめ子の少女漫画作品『満つ月の恋人』、そして小鳥彩花の『知りたがり王子とウブ嫁騎士』など、個性豊かな作品が連載されていた。これらの作品は、雑誌が目指した方向性を体現するものであった。

短い期間の刊行ではあったが、『ル・ノエル』は宙出版の女性向け漫画ラインナップにおいて、特定のニッチなジャンル、すなわち歴史・ファンタジー恋愛という分野への需要に応える役割を果たした雑誌であったと言える。そのコンセプトと作品の一部は、後継となる電子雑誌へと引き継がれ、形を変えて存続している。

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