ルートヴィヒ (2012年の映画)

映画『ルートヴィヒ』

2012年にドイツで製作された伝記映画。マリー・ノエルとペーター・ゼーアが共同で監督を務め、バイエルン王国の第4代国王、ルートヴィヒ2世の生涯を描いた作品である。「狂王」とも称された彼の、18歳で王位に就いた1864年から、謎の死を遂げた1886年までの約22年間を追っている。主演のルートヴィヒ2世は、青年期をザビン・タンブレアが、壮年期をゼバスチャン・シッパーが演じ分けている。

ストーリー概要

本作の中心となるのは、治世の義務よりも芸術を偏愛し、現実政治から遊離して自身の理想世界に没頭したルートヴィヒ2世の、波乱に満ちた人生である。彼は即位当初から、敬愛してやまない作曲家リヒャルト・ワーグナーを庇護し、その芸術活動を資金面で支えることに情熱を燃やす。ワーグナーとの関係は、師弟のような、あるいは疑似的な父子のようでもあったと描かれる。

一方で、国王は政治の世界には馴染めず、当時のヨーロッパ情勢、特にプロイセン王国との緊張関係やドイツ統一の流れの中で孤立を深めていく。広大な領土に理想的な城郭を建造することに巨額の国費を投じるなど、その現実離れした行動は周囲の政治家や閣僚との間に大きな溝を生んでいく。

また、国王の孤独な内面に深く踏み込み、側近である厩舎長リヒャルト・ホルニヒとの間に育まれた、深く内省的な感情の交流も描かれている。これは、国王の公には語られなかった秘められた関係として、彼の人間的な側面を浮き彫りにする要素となっている。オーストリア皇妃エリザベートとの親友関係も重要な要素であり、数少ない理解者である彼女との交流を通して、国王の繊細な心模様が描かれる。

最終的に、現実からますます隔絶していく国王は、精神病であると診断され、王位を追われることとなる。その後の突然の死に至るまでの過程は、彼の悲劇的な生涯の結末として描かれる。

主要な登場人物とキャスト

ルートヴィヒ2世: ザビン・タンブレア（18-26歳）、ゼバスチャン・シッパー（40歳）
バイエルン国王。芸術を愛し、政治を厭う。孤独で内省的。
エリザベート: ハンナー・ヘルツシュプルング
オーストリア皇妃。ルートヴィヒの親戚であり、数少ない理解者である友人。
リヒャルト・ワーグナー: エトガー・ゼルゲ
高名な作曲家。ルートヴィヒが芸術面で深く傾倒し、庇護する対象。
リヒャルト・ホルニヒ: フリードリヒ・ミュッケ
国王の忠実な厩舎長。ルートヴィヒとの間に特別な絆を持つ。
ヨハン・ルッツ: ユストゥス・フォン・ドホナーニ
国王の書記官から後に首相となる政治家。国王と対立することも。
ローレンツ・マイヤー: ザムエル・フィンツィ
国王の従僕。
オットー: トム・シリング
ルートヴィヒの弟。後に精神を病む。
ゾフィ: パウラ・ベーア
エリザベートの妹で、ルートヴィヒの元婚約者。
ルイトポルト: ウーヴェ・オクセンクネヒト
ルートヴィヒの叔父。
プフォルテン男爵: ペーター・シモニスチェク
バイエルン王国の首相。国王と政治的に対立する。
ホルンシュタイン伯: ギデオン・ブルクハルト
バイエルン王国の大物政治家。
マリー王太后: カタリナ・タルバッハ
ルートヴィヒの母。
フォン・グッデン教授: アウグスト・シュメールツァー
精神科医。弟オットーの主治医であり、後にルートヴィヒを精神病と診断する。
マクシミリアン・ヨーゼフ: ミヒャエル・フィッツ
エリザベートとゾフィの父。
ハインリヒ・フォーグル: フランツ・ディンダ
ルートヴィヒに見出されたオペラ歌手。

政治的なキーパーソンとして、フランス皇帝ナポレオン3世（クリストフ・マラヴォワ）や、プロイセン王国首相（後にドイツ帝国首相）ビスマルク（ベルンド・ビルクハーン）も登場し、時代の大きなうねりの中で国王が置かれた状況を描写する。

この映画は、歴史上の人物であるルートヴィヒ2世の公的な側面だけでなく、芸術への情熱、孤独、そして人間的な弱さに焦点を当て、彼の複雑な内面と悲劇的な運命を深く掘り下げた作品となっている。

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