ルートヴィヒ1世 (バイエルン公)

ルートヴィヒ1世：バイエルン公とライン宮中伯の生涯

ルートヴィヒ1世（1173年-1231年）は、バイエルン公として、そしてライン宮中伯として、13世紀初頭の中世ドイツにおいて重要な役割を果たした人物です。ケルハイムに生まれ、同地で暗殺された彼は、「ケルハイムのルートヴィヒ」として知られています。

生い立ちと初期の政治闘争

1183年、父オットー1世の死後、ルートヴィヒ1世は幼少期を叔父であるマインツ大司教コンラートと神聖ローマ皇帝フリードリヒ1世バルバロッサの後見の下で過ごしました。母アグネスは優れた指導者として、摂政を務め、息子の相続権を確固たるものにしました。しかし、16歳で親政を開始したルートヴィヒ1世は、すぐにレーゲンスブルク城伯とズルツバッハ伯との間の紛争に巻き込まれます。この紛争に介入したフリードリヒ1世は、レーゲンスブルクとズルツバッハを帝国領に組み込みました。

フリードリヒ1世の死後、後継者ハインリヒ6世の治世下では、ボヘミア王オタカル1世とその義弟であるボーゲン伯アルブレヒト3世との間で領土紛争が激化しました。アルブレヒト3世はズルツバッハの奪取を企て、ルートヴィヒ1世はこれを阻止しようとしました。しかし、アルブレヒト3世とオタカル1世の連合軍の前に敗北を喫し、ズルツバッハは占領されました。この敗北にもかかわらず、ルートヴィヒ1世はハインリヒ6世への忠誠を貫き、イタリア遠征にも同行するなど、ホーエンシュタウフェン朝を支持しました。

ハインリヒ6世の死とその後

ハインリヒ6世の死後、ドイツは王位継承を巡る争いに突入しました。ルートヴィヒ1世はシュヴァーベン公フィリップを支持しましたが、この支持は代償を伴いました。ハインリヒ6世から新たに与えられた領地を巡って、ザルツブルク大司教とレーゲンスブルク司教と対立し、戦争状態に陥る事態も招きました。しかし、ルートヴィヒ1世は交渉によって平和を取り戻しました。

ハインリヒ6世の死後、ドイツ王位はオットー4世とフィリップの間で争われました。ルートヴィヒ1世は当初フィリップを支持しましたが、フィリップが暗殺されると、オットー4世への支持に転じ、ライン宮中伯領の相続を約束させました。しかし、その後再びホーエンシュタウフェン家側に転じ、フリードリヒ2世からライン宮中伯領を与えられました。

第五回十字軍への参加

1215年、ルートヴィヒ1世はフリードリヒ2世の戴冠式に出席し、十字軍への参加を誓いました。1221年には、大規模な軍勢を率いてエジプト遠征に参加し、ダミエッタの戦いで活躍しました。しかし、エジプトで捕虜となるなど、遠征は困難を極めました。

晩年と暗殺

帰国後、ルートヴィヒ1世は若きドイツ王ハインリヒ7世の後見を引き受けましたが、皇帝フリードリヒ2世との関係が悪化しました。1230年にはケルハイム城に戻り、翌1231年、ケルハイムの橋で暗殺されました。暗殺犯は特定されませんでしたが、フリードリヒ2世の関与が疑われました。ルートヴィヒ1世の死後、ケルハイムはヴィッテルスバッハ家の居城としての地位を失い、その息子オットー2世は橋を破壊しました。

まとめ

ルートヴィヒ1世は、長年に渡り、ドイツの政治的混乱の中に身を置きながら、バイエルン公国とライン宮中伯領を支配しました。ホーエンシュタウフェン家との複雑な関係、ライバルとの抗争、十字軍への参加など、彼の生涯はドラマチックな出来事に満ちていました。その死は、中世ドイツ史における大きな転換点の一つとなりました。彼の業績は、後のヴィッテルスバッハ家の繁栄の礎となりました。彼の生涯は、権力闘争、宗教、そして十字軍という中世ヨーロッパの複雑な要素が絡み合った、魅力的で重要な歴史的物語です。彼の人生は、中世ドイツにおける政治的、宗教的、軍事的な力動を理解する上で不可欠な要素です。

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