ルーフトップ・コリアンズ

ルーフトップ・コリアンズ：ロサンゼルス暴動における韓国系アメリカ人の抵抗

1992年、ロサンゼルスで発生した大規模暴動。ロドニー・キングへの暴行事件に対する無罪判決をきっかけに、市全域で略奪や放火が蔓延しました。この混乱の中で、武装して店舗の屋上に登り、自衛を試みた韓国系アメリカ人の事業主や住民たちが「ルーフトップ・コリアンズ」と呼ばれました。

暴動の背景：人種間の緊張と歴史的文脈

暴動の中心地となったロサンゼルス南部には、黒人住民が多く暮らしていましたが、商店の多くは韓国系アメリカ人が経営していました。これは、1965年のワッツ暴動後、多くの商店主が地域を離れ、移民法改正によって移住してきた韓国系アメリカ人が事業を引き継いだことが背景にあります。

1980年代には、韓国系事業主の増加に伴い、韓国系アメリカ人と黒人社会の間で緊張が高まりました。「ミドルマン・マイノリティ」の理論が、この緊張関係を説明する一つの視点です。少数民族が生産者と消費者の間の仲介者となると、両者からの不満や怒りの矛先となりやすいという理論です。言語や文化の壁、英語の不慣れなども、人種間の溝を深くしました。

しかし、韓国系店主と黒人住民の間には、良好な関係を築いていたケースも多くありました。暴動直後には、略奪者から韓国系店主を守るために黒人住民が駆けつける場面もあったと報告されています。

一方で、スン・ジャ・ドゥによる黒人少女ラターシャ・ハーリンズの射殺事件（1991年）や、テイ・サム・パクによる黒人男性リー・アーサー・ミッチェルの射殺事件（1991年）など、人種間の摩擦が深刻な事件に発展した例もありました。これらの事件は、1992年暴動の遠因の一つとして挙げられます。

暴動中の出来事：屋上からの抵抗と犠牲

暴動が拡大する中、市警察は治安維持に失敗しました。コリアタウンは、警察の防衛線から外され、住民はほぼ自力で身を守らざるを得ませんでした。この状況下で、多くの韓国系アメリカ人が武器を手に抵抗を始めました。地元の韓国系放送局の呼びかけで、銃器所持者らがコリアタウンに集結し、武装した韓国系住民が屋上から略奪者に対抗しました。

この抵抗は、銃規制や自警主義に関する議論を巻き起こしましたが、同時に、彼らの勇気や機転への称賛も生まれました。しかし、抵抗の過程で、韓国系住民のエドワード・ソン・リーが誤射され死亡、ラテン系住民のヘクター・カストロが射殺されるなど、犠牲者も出ました。

連邦軍の派遣により治安は回復しましたが、暴動により2,200件以上の韓国系商店が被害を受け、約4億ドルの損害が出たとされています。

ルーフトップ・コリアンズのその後：象徴と議論

ルーフトップ・コリアンズは、銃器所持の権利擁護者にとって、市民による自衛の必要性を示す象徴的な存在となりました。近年ではソーシャルメディアで話題となり、人種間の緊張が高まる中で、黒人社会との関係改善に向けた議論にも利用されています。彼らの行動は、複雑な歴史的背景と、人種間の葛藤、自己防衛、そしてアメリカ社会における銃器問題といった多様な要素を内包した出来事でした。

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