レイブル (紋章学)

紋章学におけるレイブルの詳細解説

レイブル（Label）は、紋章学において、馬具の飾り紐に似た形状を持つチャージ（紋章の構成要素）です。主に、同一家系内の個人や分家を識別するディファレンシング（紋章の変更）に用いられます。しかし、時には通常のチャージとして、特に意味を持たない場合もあります。

レイブルの形状

レイブルの形状には、大きく分けて以下の2種類があります。

1. 横帯がシールド（盾）の左右端まで伸びているもの
2. 横帯が左右端に達せず、下方に垂れ下がっているもの

垂れ下がった部分には、以下の2種類があります。

まっすぐな垂れ
末広がりの垂れ

これらの組み合わせにより、4種類の形状が考えられますが、紋章記述上は区別されず、すべて「レイブル」として扱われます。重要なのは、垂れの数です。形状が異なっていても、垂れの数が同じであれば、同じ紋章として認識されます。

ディファレンシングとケイデンシー・マーク

レイブルは、ディファレンシングやケイデンシー・マーク（家系の序列を示す記号）として用いられることがあります。ケイデンシー・マークとして使用される場合、レイブルの垂れは通常3つ以上の奇数になります。しかし、通常のチャージとして用いる場合は、偶数の垂れを持つレイブルも存在します。

イギリス王室の紋章では、レイブルが特に有名です。王族の紋章に見られる「ホワイト・レイブル」は、イギリス王室の象徴の一つとなっています。

ケイデンシー・マークとしてのレイブル

イギリスの紋章学では、ケイデンシー・マークは家系の分家や次男以下の男子を示すために用いられます。長男は、父親が存命の間、家紋にレイブルを加えた紋章を使用します。次男以降は、それぞれ異なるチャージ（三日月、星、鳥など）で区別されます。

長男：レイブル
次男：クレセント（三日月）
三男：マレット（星）
四男：マートレット（脚のない鳥）
五男：アニューレット（円環）
六男：フルール・ド・リス（ユリ）
七男：ローズ（バラ）
八男：クロス・モーリン（先端が錨型に割れた十字）
九男：ダブル・クォーターフォイル（八枚葉）

レイブルの垂れ（ポイント、ペンダント）

レイブルの垂れは、ポイント（英）またはペンダント（仏）と呼ばれます。その数は、必ずしも何か特定の意味を持つわけではありませんが、一般的には以下の意味合いを持つと考えられていました。

3つの垂れ：筆頭相続人（父親の存命の間）
5つの垂れ：家長の孫の最年長男子（祖父が存命の間）
7つの垂れ：家長の曽孫の最年長男子（曽祖父が存命の間）

イギリス王室におけるレイブル

イギリス王室では、レイブルの用法に独自の慣例が見られます。例えば、エリザベス2世の長男であるチャールズ3世以外の男子も、3つの垂れを持つホワイト・レイブルを使用しています。また、アン王女など、女子の紋章にもレイブルが見られます。これは、レイブルが必ずしもケイデンシー・マークとして機能しているわけではないことを示唆しています。

さらに、チャールズ3世の息子であるウィリアム王子の紋章のレイブルは3つの垂れを持つ一方、弟のヘンリー王子のレイブルは5つの垂れを持っています。このことから、イギリス王室では、必ずしも全員が同じルールでレイブルを使用しているわけではないことが分かります。

また、イギリス王室では、レイブルの垂れに小さなチャージを加えることで、ディファレンシングを行うことがあります。これらのチャージは、通常のケイデンシー・マークとは異なる、王室独自のルールに従っています。詳しくは、「イギリス王室のケイデンシー」を参照してください。

まとめ

レイブルは、紋章学において重要なチャージであり、家系の識別や序列を示すために用いられます。その形状や垂れの数にはルールがありますが、特にイギリス王室では独自の慣例が見られます。レイブルは、紋章の世界における複雑かつ興味深い要素の一つです。

関連項目

紋章学
紋章
旗章学

外部リンク

コウブチ紋章資料館
紋章学総合サイト
中世ヨーロッパの風景 「紋章について」
* Dragon's Lair「ヨーロッパ紋章学」

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