レイモンド・コンデ

レイモンド・コンデ：日本ジャズ黎明期を彩ったフィリピンの巨匠

レイモンド・コンデ（Raymond Conde, 1916年1月23日 - 2003年12月23日）は、フィリピン出身のジャズ・クラリネット奏者、ジャズ・シンガーであり、日本ジャズの発展に大きく貢献した人物です。後に日本へ帰化し、吉場レイモンドという名でも知られています。

黎明期のジャズとの出会い

大正時代の横浜や神戸は、貿易港として栄え、アメリカ人船員によってニューオーリンズスタイルのジャズが演奏されていました。1922年には東京の上野公園で開催された「平和記念大博覧会」でミンストレル・ショーが上演され、デキシー・ジャズも演奏されました。この時、コンデ三兄弟の長兄であるヴィディ・コンデ(Vide Conde)が参加しており、彼は後に日本のジャズ黎明期を担い、多くのジャズメンを育てました。

当時のフィリピンは、アメリカの植民地支配下にありましたが、アメリカ人官僚や軍人向けの遊興ホールやクラブでジャズが演奏されていました。そのため、フィリピンは黎明期のデキシー・ラグタイム・ジャズバンドの影響を早くから受け、アジアで最も早くアメリカンスタイルのミュージシャンが育つ環境にありました。

日本での活躍

ヴィディ・コンデが日本で活躍の場を得ると、弟たちにも来日を勧めました。レイモンド・コンデは1932年に来日し、松竹軽音楽団で活動を始めます。1933年には早稲田大学国際部に入学し、在学中から演奏活動を行い、後に上海租界でコンデ・トリオとして名声を確立しました。

戦前のジャズ黎明期には、演奏家であっても民族差別を受けることがありましたが、コンデはスペインとアメリカの統治下で育まれたフィリピン人特有の器用さと音楽的センスを発揮し、才能を開花させました。

1934年末には、兵庫県尼崎・杭瀬地区のダンスホールから集められた楽士による「四ホール連盟ダンスオーケストラ」が結成され、大阪テイチクでレコーディングを行いました。ヴィディ・コンデが監督指揮を務め、グレゴリオ、レイモンドを含むフィリピン人楽士たちが参加しました。

レイモンド・コンデの限りなく本物に近いサウンドとリズムは、秋吉敏子をはじめとする多くの日本人ジャズメンに影響を与えました。その人柄と知性から、彼は周囲から尊敬される偉大なジャズプレーヤーでした。戦時下の敵性音楽排除という苦難を乗り越え、レイモンドはサッチモのようなスタイルで、本場仕込みの英語の発音と甘い声で歌い、戦後の日本ジャズ界で才能を発揮しました。戦後は飯山茂雄やジョージ川口らとゲイ・クインテット、ゲイ・シックス、ゲイ・セプテットなどのバンドで活動しました。

日本人女性、貞子と結婚して日本に帰化し、吉場レイモンドと名乗るようになります。歌手・俳優のビンボー・ダナオとともに、戦後の日本で最も知られるフィリピン人の一人となりました。

2003年12月23日、杉並区の病院で87歳で永眠。追悼ミサは2004年1月23日にカトリック上野毛教会で行われました。

受賞と栄誉

レイモンド・コンデは、その功績が認められ、数々の賞を受賞しています。

1981年 日本レコード大賞顕彰プレイヤー賞
1987年 第3回日本ジャズボーカリスト大賞 特別賞
* 1998年 芸能功労者表彰

共演ミュージシャン

レイモンド・コンデは、数多くの著名なミュージシャンと共演しました。バッキー白片、フランシス・キーコ、飯山茂雄、ジョージ川口、ナンシー梅木、マーサ三宅など、国内外のトップミュージシャンとの共演は、彼の音楽キャリアをさらに輝かしいものにしました。

日本のジャズ界で活躍するフィリピン人ミュージシャン

レイモンド・コンデの功績は、後の世代にも受け継がれ、現在も多くのフィリピン人ミュージシャンが日本のジャズ界で活躍しています。ジェイク・コンセプション、ロアナ・シーフラなどがその代表例です。

レイモンド・コンデは、日本ジャズの黎明期から発展に大きく貢献した偉大な音楽家として、その名は永遠に語り継がれるでしょう。

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