レイモン・ドメネク

レイモン・ドメネク：フランスサッカー界の異端児

レイモン・ドメネク（Raymond Domenech）は、1952年1月24日生まれ、フランス・リヨン出身の元サッカー選手、そして指導者です。カタルーニャ系の血を引くドメネクは、現役時代はリヨンなどで活躍し、フランス代表としても8試合に出場しました。しかし、彼の名が広く知られるようになったのは、2004年から2010年まで務めたフランス代表監督としての時代でした。

フランス代表監督就任まで

選手兼監督としてFCミュルーズで指導者のキャリアをスタートさせたドメネクは、古巣リヨンの監督を経て、1993年にフランス代表ユースチームの監督に就任。10年以上にわたり、数多くの若手選手を育成しました。アトランタオリンピックではフランス代表監督も務めましたが、ジダン、ピレス、アンリ、トレゼゲといったスター選手を擁しながらも、タイトルを獲得することはできませんでした。

フランス代表監督時代（2004年 - 2010年）

2006年ドイツW杯：準優勝という奇跡

EURO2004後、ジャック・サンティニの後任としてフランス代表監督に就任したドメネク。ジダン引退後のチーム再建という重責を担いましたが、その道のりは決して平坦ではありませんでした。W杯予選では一時グループ4位に低迷し、予選敗退の危機に瀕しましたが、ジダン、テュラム、マケレレを代表に復帰させると、チームは息を吹き返し、本大会出場を決めました。

しかし、選手選考の基準を「占星術に従った」と発言したり、ピレスやジュリ、アネルカらとの確執が報じられるなど、その言動は常に物議を醸しました。それでも、本大会では強固な守備とリベリーの活躍、そしてジダンの存在がチームをまとめ上げ、優勝候補のブラジルを破るなど快進撃を見せ、準優勝という好成績を収めました。もっとも、この躍進はジダンの求心力によるところが大きく、ドメネクの采配には依然として厳しい評価が付きまといました。

EURO2008：惨敗とプロポーズ

ドイツW杯後も続投が決まったドメネクでしたが、EURO2008予選ではクラブとの関係が悪化。本大会では、トレゼゲやメクセスを招集せずに確執を起こし、さらにオランダに1-4、イタリアに0-2で大敗するなど、グループリーグ最下位という惨憺たる結果に終わりました。

さらに、イタリア戦後のインタビューで、辞任の意思を問われた際に「エステル・ドニ（フランスのアナウンサー）と結婚する」とプロポーズするという前代未聞の行為に、フランス国内から大バッシングを浴びました。

2010年南アフリカW杯：崩壊と退場

EUROの惨敗にもかかわらず、続投が決まったドメネク。しかし、トレゼゲやフレイが代表引退を表明するなど、チーム内外からの信頼を失っていました。W杯予選ではアイルランドとのプレーオフで物議を醸す勝利を収め、本大会出場を決めましたが、本大会ではウルグアイとの初戦を引き分け、メキシコに完敗。さらに、アネルカがドメネクに暴言を吐き代表追放、選手が練習をボイコットするなど、チームは完全に崩壊状態に陥りました。

南アフリカとの最終戦にも敗れ、グループリーグ最下位で大会を終えたドメネクは、試合後にパレイラ監督との握手を拒否し、さらなる批判を浴びました。

その後

2010年9月にフランス代表監督を解任されたドメネクは、その後、ブルターニュ代表監督を経て、2020年12月にFCナントの監督に就任。しかし、8試合で1勝もできずに解任されました。

レイモン・ドメネクは、その独特なキャラクターと数々の騒動によって、常に議論の的となる人物でした。その功績と過ちは、フランスサッカー史に深く刻まれています。

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