レオナ・ヘルムズリー

レオナ・ヘルムズリー：不動産界の「意地悪女王」

レオナ・ヘルムズリー（1920年7月4日 - 2007年8月20日）は、アメリカの実業家であり、その強烈な個性と辣腕で、ニューヨークの不動産業界に名を残しました。夫である不動産王ハリー・ヘルムズリーと共に、エンパイアステートビルをはじめとする数々の高級不動産、そして全米に展開するヘルムズリー・ホテルチェーンを運営し、巨万の富を築き上げました。

しかし、その徹底的な仕事至上主義、短気で非情な性格、そして強欲さから、「Queen of Mean（意地悪女王）」という異名で広く知られるようになりました。また、彼女の死後、愛犬に1200万ドルという破格の遺産が残されたことも、世間の耳目を集めました。

生涯

レオナは、1920年にニューヨーク市郊外で、帽子職人の娘として生まれました。本名はリナ・ミンディ・ローゼンタール。ポーランドからのユダヤ系移民である両親のもと、各地を転々としながら育ち、高校は中退しています。その後、ユダヤ風の苗字をロバートと改名し、モデルや秘書として働き始めました。

1941年に弁護士と結婚し、一子をもうけますが、1952年に離婚。1953年には衣類会社社長と再婚するも、1960年に再び離婚しています。その後、不動産販売員として才能を開花させ、1960年代末には、勤めていた不動産会社の重役へと昇りつめました。

不動産王との結婚

1960年代末、レオナは資産50億ドルとも言われた大富豪、ハリー・ヘルムズリーに接近し、1972年に結婚しました。ハリーは、ブルックリンの貧しい家庭出身でありながら、パートナーと共に不動産ビジネスで成功を収めた人物です。質素で控えめな性格でしたが、レオナとの結婚後、その生活は一変。セントラルパークを見下ろす豪華なペントハウスをプール付きに大改造し、自家用ジェットで通勤するなど、派手な生活を送るようになったことは、周囲を驚かせました。

スキャンダルと転落

1980年代に入ると、レオナはヘルムズリー・ホテル・チェーンの社長に就任。徹底的なサービス向上と、自ら出演する派手な広告戦略によって、ホテルの稼働率を大幅に向上させました。しかし、その一方で、従業員に対しては暴君のように振る舞い、「ホテルの女王」ならぬ「性悪女王」と陰口を叩かれるようになりました。

1986年、従業員からの訴訟をきっかけに、経費の私的流用や脱税が発覚。裁判では、ヘルムズリー家の家政婦が証言した「税金は庶民が払うもの」というレオナの発言が大きく報道され、世間の反感を買いました。有罪判決を受け、服役することになったレオナでしたが、その後は篤志家として病院建設などに寄付を行うようになりました。しかし、その後も不当解雇などで訴訟を起こされ、多額の賠償金を支払うことになります。

晩年と遺産

1997年に夫ハリーが死去すると、レオナはヘルムズリー・スプリー社を含む全財産を相続。エンパイアステートビルの賃借権を巡り、当時の所有者の一人であったドナルド・トランプと激しい争いを繰り広げました。その後、訴訟を起こしていたビジネスパートナーに同社を売却し、慈善活動に専念するようになりました。2007年、コネチカット州グリニッジの豪邸で、「私のおとぎ話は終わった」という言葉を残し、87歳でその生涯を閉じました。

彼女の死後、愛犬のマルチーズ「トラブル」に1200万ドルという巨額の遺産が残されたことは、世界中で大きな話題となりました。また、遺言によって相続から外された孫がいたことなども明らかになり、その遺産相続をめぐっては、様々な騒動が巻き起こりました。

レオナ・ヘルムズリーは、その波乱に満ちた人生と強烈な個性によって、アメリカ社会に大きな足跡を残した人物と言えるでしょう。

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