レオ・ハーヴィッチ

レオ・モーリス・ハーヴィッチ（1910年9月11日-2009年4月25日）は、20世紀におけるアメリカを代表する心理学者のひとりであり、色覚研究におけるパイオニアとして広く知られています。彼の研究は、色の知覚メカニズムの理解を深める上で画期的な貢献を果たしました。

ハーヴィッチは、ハーバード大学で学士号と博士号を取得。その後、ハーバード大学で研究活動に従事した後、イーストマン・コダック社の研究員として勤務しました。コダック在籍中には、下院非米活動委員会に召喚されるという経験もしています。マサチューセッツ工科大学の教授からの証言により、ハーヴィッチがかつて共産主義者と繋がっていた可能性が疑われたのです。しかし、ハーヴィッチは証言を拒否する権利を行使しました。

1957年から1962年にかけては、ニューヨーク大学の教授を務め、その後はペンシルバニア大学に移り、1979年に退職するまで教鞭を執りました。

ハーヴィッチの研究生活において、特に重要な役割を果たしたのが、彼の妻であるドロシー・ジェイムソンとの共同研究です。ジェイムソンも認知心理学の第一人者であり、2人は互いに協力し、数々の重要な発見を成し遂げました。特に、色覚の反対色過程理論に関する研究は、彼らの名を不朽のものにしました。

ハーヴィッチとジェイムソンは、人間の視覚における色の知覚メカニズムを、従来の三色説とは異なる視点から解明しました。彼らの研究は、反対色過程理論を定量的に裏付ける多くの実験結果に基づいており、それまでの色覚理論を大きく発展させるものでした。ヤング・ヘルムホルツの三色説を補完するだけでなく、色覚のより完全な説明を提供するものとして広く受け入れられています。

学術界への貢献は高く評価され、ハーヴィッチは1975年に米国科学アカデミー会員に選出されています。また、アメリカ心理学会から心理学への顕著な科学的貢献に対してAPA賞を受賞するなど、数々の栄誉に輝きました。アメリカ光学会フェローにも選出され、実験心理学会からはジェイムソンとともにハワード・クロスビー・ウォーレンメダルを受賞しています。さらに、アメリカ光学会のエドガー・D・ティリヤー賞、国際色彩学会のジャッド賞なども受賞しており、その業績は国際的にも高く評価されています。

ハーヴィッチの代表的な著書として『Color Vision』があります。この書籍は、彼の長年の研究成果をまとめたものであり、色覚研究の分野における標準的なテキストとして広く利用されています。日本語版も出版されており、日本の研究者にも大きな影響を与えました。

1998年4月にジェイムソンが亡くなった後も、ハーヴィッチは研究を続けましたが、2009年、ニューヨーク市の自宅で亡くなりました。彼の死は、色覚研究の分野に大きな損失をもたらしました。しかし、彼の残した業績は、これからも色覚研究の発展に貢献し続けることでしょう。

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