レギン (北欧神話)

レギン：北欧神話の鍛冶師、野望と悲劇の物語

レギンは、北欧神話に登場する複雑な背景を持つ人物です。彼は鍛冶師として知られ、その物語は、黄金、裏切り、そして運命に翻弄される人々の姿を描き出しています。

生い立ちと黄金を巡る争い

レギンは、フレイズマルの息子であり、ファフニールとオッテルの兄弟でした。ある時、ロキが誤ってオッテルを殺害してしまいます。フレイズマルは、その賠償金としてオーディンたちから大量の黄金を得ました。しかし、レギンは兄ファフニールと共に黄金の分配を求めたものの、拒否されます。その結果、兄弟は父を殺害し、黄金を奪い合うという悲劇へと発展します。最終的に、黄金はファフニールによって独占され、彼はその力によって巨大な竜へと姿を変えてしまいます。

シグルズとの出会い

黄金を奪われたレギンは、正体を隠し、デンマークの王ヒャルプレクの下で鍛冶師として働くことになります。そこで、彼はフラグランド王シグムントの遺児であるシグルズの養育を任されます。レギンはシグルズに様々な知識を教え、勇士として育て上げます。しかし、彼の真の目的は、シグルズを利用してファフニールを倒させ、黄金を奪い返すことでした。

レギンは、シグルズに名剣グラムを与え、竜となったファフニールとの戦いに挑ませます。シグルズは見事にファフニールを討ち果たしますが、レギンの狡猾な本性は、その直後に明らかになります。

裏切りと最期

ファフニールを倒した後、シグルズはレギンの指示で、竜の心臓を焼いて食べる準備をします。しかし、心臓の焼き加減を確かめる際に、シグルズは誤って指を火傷してしまいます。その指についた竜の血を舐めたことで、彼は鳥の言葉を理解できるようになります。鳥たちは、レギンがシグルズを殺害して黄金を独り占めしようと企んでいることを警告します。シグルズはレギンの裏切りを知り、眠っている彼を斬り殺します。

ミーメとしての登場

リヒャルト・ワーグナーの楽劇『ニーベルングの指環』では、レギンはミーメという名の小人として登場します。ミーメもまた、ジークフリート（シグルズ）を操り、竜を倒させようと企む人物として描かれています。

レギンの物語から得られる教訓

レギンの物語は、欲望、裏切り、そして運命の残酷さを描いています。彼は黄金への執着によって、家族を裏切り、最終的には自滅へと向かいます。彼の物語は、私たちに物質的な欲望の危険性と、信頼と誠実さの重要性を教えてくれます。

レギンの物語は、北欧神話の中でも特に人気のある物語の一つであり、多くの芸術作品や文学作品に影響を与えています。彼の複雑な性格と悲劇的な運命は、今もなお、多くの人々の心を捉えて離しません。

参考文献

Byock, Jesse L. (1990). Saga of the Volsungs: The Norse Epic of Sigurd the Dragon Slayer. University of California Press.
Wagner, Richard (1911). Siegfried & The twilight of the gods. W. Heinemann.
石川栄作『ジークフリート伝説 ワーグナー『指環』の源流』講談社学術文庫、2004年。
グスタフ・ネッケルほか 編、谷口幸男 訳『エッダ―古代北欧歌謡集』新潮社、1973年。
* 谷口幸男 訳『アイスランドサガ』新潮社、1979年。

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