レッスン LESSON

『レッスン LESSON』は、1994年に公開された日本映画です。この作品は、作家・五木寛之の同名小説を映画化したもので、人間の内面に深く分け入るようなドラマが展開されます。

物語は、モータージャーナリストとして活躍する山口努（渡部篤郎）を軸に動き出します。彼は大学時代の先輩である田代の紹介で、香港の大富豪の未亡人であり、美術工芸鑑定家でもある佐伯伽耶（秋吉久美子）と出会います。その神秘的で知的な美しさに、努はたちまち心奪われていきます。

伽耶への強い関心から、努は自身の幼馴染である杏子（中野みゆき）に彼女のことを尋ねようとしますが、杏子は頑なに口を閉ざし、「彼女に近づかないで。私は彼女が怖い」と努に警告します。この杏子の反応には、彼女がかつて経験した複雑な過去が関わっており、それは伽耶との間にあったある出来事が原因でした。杏子にとっての初めての相手が伽耶であったという衝撃的な事実が、努に明かされるのです。

そんな中、ある日突然、努のもとに伽耶から一本の電話が入ります。空港への迎えを頼まれたことをきっかけに、二人の関係は急速に深まり、身体を求め合うようになります。しかし、共に過ごす時間が増えるにつれて、努は伽耶の計り知れない精神世界や、その内に秘めた謎めいた部分に触れ、深い戸惑いを感じ始めます。彼女の掴みどころのない魅力と、自身の理解を超えた世界観に翻弄されていくのです。

やがて二人はイタリアへと旅立ちます。旅先で努は、伽耶の友人であるフランク・ヨナシュ（フランク・ニール）を紹介されます。政治運動家であるフランクとの出会いもまた、努にとって刺激的な体験となります。イタリアでの日々を経て日本に帰国した努は、伽耶との濃密な関わりを通じて、自身の内面に少しずつ変化が訪れていることを実感します。彼女をもっと深く理解したい、その複雑な心に寄り添いたいと願うようになります。

しかし、運命は残酷な形で二人を引き裂きます。伽耶を理解しようと努めていた矢先、フランクが突然努のマンションを訪れ、悲劇的な報せを伝えます。それは、フランク自身を狙った爆弾が仕掛けられたフェラーリに、偶然にも伽耶が乗り合わせてしまい、命を落としたというものでした。予期せぬ、あまりにも突然の死に、努は深い衝撃と悲しみに打ちひしがれます。

伽耶を失った努は、彼女との思い出を辿るかのように再びイタリアの地を踏みます。込み上げる涙をこらえながら、かつて伽耶と共に歩いたかもしれない街並みを一人、静かに歩き続けます。この旅は、伽耶との「レッスン」を通じて変化した自身の心と向き合い、失った愛を悼む旅となるのでした。

主要キャストは以下の通りです。

佐伯伽耶：秋吉久美子
山口努：渡部篤郎
田代杏子：中野みゆき
田代亮：石原良純
フランク・ヨナシュ：フランク・ニール
ミン：牧よし子
* 美紀：長谷部香苗

本作は、五木寛之らしい、生と死、愛と孤独、そして人間の複雑な精神世界を深く問いかける作品であり、秋吉久美子演じる佐伯伽耶の存在感が物語全体を牽引しています。

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