レッツ・ゲット・イット・オン

「レッツ・ゲット・イット・オン」（Let's Get It On）は、マーヴィン・ゲイが1973年に発表し、全米1位に輝いた彼の代表作の一つです。ローリング・ストーン誌の選ぶオールタイム・グレイテスト・ソング500（2010年版）では168位にランクインするなど、音楽史に残る名曲として知られています。

楽曲誕生の背景

この楽曲は、もともとソングライターとして活動していたエド・タウンゼンドが、アルコール依存症のリハビリ施設に入所中に作った曲でした。1973年に施設を出たタウンゼンドは、マーヴィン・ゲイの自宅を訪れ、彼にいくつかの楽曲を披露します。「レッツ・ゲット・イット・オン」もその一つであり、当初は宗教的なテーマを持った曲だったと言われています。

ゲイはタウンゼンドの楽曲に感銘を受け、二人は共同でソロ・アルバムの制作に取り掛かることになります。1973年3月13日から、ロサンゼルスのモータウンのスタジオ、ヒッツヴィル・ウェストでレコーディングが開始されました。

歌詞の変遷

歌詞は、ゲイの友人のケネス・ストーヴァーによって政治的な要素が加えられましたが、最終的にはゲイ自身が大幅に書き換え、愛とセックスをテーマにした楽曲へと生まれ変わりました。この大胆なテーマの変更が、楽曲の魅力を一層引き立てることになります。

レコーディング・セッション

1973年3月13日には、ベーシック・トラックとデモ・ボーカルが録音されました。編曲とオーケストラの指揮は、ルネ・ホールが担当。ジョー・サンプルがピアノを、ウィルトン・フェルダーがベースを演奏しました。この日に録音された音源は、アルバム『Let's Get It On』の4曲目「Keep Gettin' It On」にも使用されています。

3月22日には、リード・ボーカルのレコーディングが行われました。この日、タウンゼンドの友人のバーバラ・ハンターが、17歳になったばかりの娘ジャニスを連れてスタジオを訪れます。ジャニス・ハンターは、後にゲイと交際し、1977年に結婚することになります。ゲイが「レッツ・ゲット・イット・オン」を歌入れしている間、彼女はスタジオにいたという逸話も残っています。

リリースと成功

「レッツ・ゲット・イット・オン」は、1973年6月15日にシングルとしてリリースされました。B面には、テンプテーションズのカバー曲「I Wish It Would Rain」（1970年のアルバム『That's the Way Love Is』に収録）が収録されました。シングル・バージョンは、8月28日発売のアルバム『Let's Get It On』収録のバージョンとはミックスが異なっています。

この楽曲は、ビルボード・Hot 100とビルボードのソウルチャートで1位を獲得し、プラチナディスクに輝きました。その人気は衰えることなく、2001年に発売された『Let's Get It On』のデラックス・エディションには、デモ・バージョンが収録されています。

「レッツ・ゲット・イット・オン」は、マーヴィン・ゲイの音楽キャリアにおいて重要な位置を占めるだけでなく、音楽史においても重要な楽曲として評価されています。その官能的な歌詞とメロディーは、時代を超えて多くの人々を魅了し続けています。

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