レディ・ステディ・ゴー

『レディ・ステディ・ゴー』（Ready Steady Go!, RSG!）は、1960年代半ばのイギリスにおいて、若者文化の中心であったロックやポップ音楽を専門に扱った画期的なテレビ番組です。

この番組は、イギリスの独立系テレビ局ITVネットワークで放送されました。企画構想は、レディフュージョンのプロデューサーであったエルカン・アラン氏によるものです。ロンドン地域を担当していたアソシエーテッド-レディフュージョンが番組の制作を手がけ、最初の放送を迎えたのは1963年8月のことでした。その人気は次第に高まり、やがて全国へと生中継される番組へと発展していきました。

本番組が放送されていた1960年代半ばは、まさにブリティッシュ・ポップスが世界を席巻していた最盛期と重なります。この時期、世界中でビートルズの人気が爆発的に高まっていたことも、番組の注目度を一層引き上げました。

毎週金曜日の夜に放送され、「The weekend starts here!」（ここから週末が始まる！）という印象的なフレーズで幕を開けました。番組のテーマソングとしては、当初マンフレッド・マンの「5-4-3-2-1」が使用され、後に「Hubble Bubble (Toil and Trouble)」に変更されました。同時期にBBCで放送されていた音楽番組『トップ・オブ・ザ・ポップス』に先行して始まり、より若者文化に寄り添った、格式ばらない雰囲気が特徴でした。

番組開始当初、出演アーティストたちはレコードの音源に合わせて演奏する、いわゆるリップシンク（口パク）形式が一般的でした。しかし、1964年後半になると、一部のゲストアーティストが実際に楽器を演奏し、歌うライブ演奏を披露するようになります。そして、1965年4月からは、すべての出演者がライブ演奏を行う形式へと完全に移行しました。これは当時のテレビ音楽番組としては先進的な試みでした。

また、当時の多くの音楽番組が出演者に演奏時間の都合で楽曲を短縮させる中、『レディ・ステディ・ゴー』はアーティストが楽曲をフルコーラスで披露することを認めた点で画期的でした。これにより、視聴者はアーティストのパフォーマンスをより忠実に楽しむことができました。

しかし、1966年頃には、一時代を築いたビート・ムーブメントにも陰りが見え始めます。こうした音楽シーンの変化に伴い、番組は1966年12月にその歴史に幕を下ろすこととなりました。わずか3年余りの放送期間でしたが、その人気が頂点にあった時期に幕を閉じたことが、かえって番組をテレビ史における伝説的な存在として位置づける結果となりました。

番組終了後、その権利は人気グループ、デイブ・クラーク・ファイブの中心人物であったデイブ・クラーク氏が所有することになりました。時を経て1989年には、アメリカのディズニー・チャンネルで放送され、米国で初めてその姿が紹介されました。ただし、これは有料チャンネルでの放送であり、イギリスでティーンエイジャーを熱狂させた姿とは異なり、深夜枠で大人の視聴者を対象としたものだったとされます。

過去には、番組の貴重な映像をまとめたダイジェスト版がビデオやLDといった形でリリースされましたが、現在では残念ながらこれらも廃盤となっている状況です。

『レディ・ステディ・ゴー』は、短い放送期間ながら、革新的な演出やライブ演奏の導入、そしてブリティッシュ・ポップスの歴史的瞬間を捉えた映像の数々により、今なお伝説の音楽番組として語り継がれています。

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