レナウンの唄

「レナウンの唄」（レナウンのうた）は、1960年にアパレル企業レナウンのために特別に作られたコマーシャルソングです。

この楽曲の制作は、当時、数々の優れたコマーシャルソングを手掛けていたことで知られる三木鶏郎氏が担当しました。作詞と作曲の両方を三木氏が手掛け、レナウンの洋服を身にまとうことで得られる感覚や、そこから生まれる「良いムード」「良いデザイン」といったイメージを音楽によって表現することを目指しました。

歌唱アーティストには、当時の日本歌謡界で絶大な人気を誇っていた女性デュオ、ザ・ピーナッツが起用されました。彼女たちの洗練された歌声が、レナウンが打ち出したいモダンなブランドイメージと合致すると考えられたのでしょう。完成した楽曲は、テレビやラジオといった当時の主要なメディアを通じてCMとして放送され、全国に届けられました。歌詞の特徴として、レナウンというブランド名が効果的に、かつリズミカルに繰り返される点が挙げられます。

この「レナウンの唄」によるCMキャンペーンは、レナウンのファッションが提供する魅力的な世界観を消費者に伝える役割を果たしました。

しかしながら、「レナウンの唄」がCMソングとして使用された期間は、非常に短いものとなりました。その理由は、楽曲が発表された翌年、1961年に新たなレナウンのCMソングが登場したためです。小林亜星氏が作曲を手掛けたその曲こそ、後に大ヒットし、レナウンのCMソングとして長く親しまれることになる「ワンサカ娘」でした。「ワンサカ娘」は発表されるやいなや、瞬く間に人気を博し、レナウンのメインCMソングの座を確立します。これにより、「レナウンの唄」はわずか一年ほどでCMでの使用を終えることになったのです。

結果として、「レナウンの唄」が使用されたCMの露出期間は極めて限定的となり、現在では当時のコマーシャルについて知る人は少ないのが実情です。残念ながら、当時のコマーシャル映像自体も現存しておらず、その様子を映像で確認することは困難です。

このようにCMソングとしての役割は短命に終わった「レナウンの唄」ですが、楽曲そのものは失われることなく残されました。制作を手掛けた三木鶏郎氏の事務所が音源を保管していたのです。この保管されていた貴重な音源が、時を経て再び世に出る機会を得ました。2004年11月26日にキングレコードから発売されたCDボックスセット『ザ・ピーナッツ メモリーズBOX』に、「レナウンの唄」が収録されたのです。これにより、発表からおよそ40年以上の時を経て、多くの人々がこの歴史的なコマーシャルソングを再び耳にすることができるようになりました。CMの表舞台から姿を消した短い期間とは対照的に、楽曲自体は音源として現代に引き継がれています。この楽曲は、日本の初期テレビCMソングの歴史を知る上で貴重な一曲と言えるでしょう。

もう一度検索