レーザー科学アインシュタイン賞

レーザー科学アインシュタイン賞

レーザー科学アインシュタイン賞（Einstein Prize for Laser Science）は、かつて光量子エレクトロニクス学会（旧名称: Society for Optical and Quantum Electronics）によって設けられ、イーストマン・コダック社の支援を受けていた国際的な学術賞です。アルベルト・アインシュタインの名を冠し、レーザー科学および関連分野、特に量子光学における重要な業績を顕彰することを目的としていました。

賞の歴史と概要

この賞は1988年に創設され、1999年まで比較的短い期間にわたり授与されました。その間、世界中の第一線の研究者たちが受賞しています。授与式および受賞者の発表は、毎年開催されるThe International Conference on Lasers and Applications、通称「Lasers 'XX」会議の場で行われました。

受賞者には、記念として特別なメダルが贈られました。このメダルは直径約3インチ（およそ7.6センチメートル）の真鍮製で、表面にはアルベルト・アインシュタインの横顔肖像が刻まれています。さらに、アインシュタインが光と物質の相互作用について理論的に記述した際に導入した、A係数とB係数を含む2準位系における遷移の描写もデザインに取り入れられており、賞の分野的意義を象徴しています。

授与対象と受賞者

レーザー科学アインシュタイン賞は、広範なレーザー科学に関連する分野を対象としていましたが、実際の受賞者の業績を振り返ると、特に量子光学分野における基礎的かつ応用的な貢献に対して贈られる傾向が強かったことがわかります。光と原子・分子との相互作用、非線形光学、量子情報の基礎など、現代光学の根幹をなす研究が多く評価されました。

歴代受賞者には、この分野で極めて著名な研究者が名を連ねています。以下に主な受賞者とその受賞年を挙げます（敬称略）。

1988年: セルジュ・アロシュ、Herbert Walther
1989年: H. Jeff Kimble、Richart E. Slusher
1990年: Carlton M. Caves、Daniel Frank Walls
1991年: S. E. Harris、L. M. Narducci
1992年: ジョン・ホール、ウィリス・ラム
1993年: Raymond Chiao、ノーマン・ラムゼー
1994年: G. S. Agarwal
1995年: テオドール・ヘンシュ、カール・ワイマン
1996年: デービッド・ワインランド、Peter L. Knight
1999年: ポール・コーカム

ノーベル物理学賞との関連

レーザー科学アインシュタイン賞の最も特筆すべき点の一つは、その受賞者の中から多数のノーベル物理学賞受賞者が輩出されていることです。これは、本賞がその時代のレーザー科学・量子光学における最も重要な研究成果と、それを成し遂げた研究者たちを的確に評価していたことを示唆しています。

具体的には、ウィリス・ラム氏（1955年ノーベル物理学賞受賞）とノーマン・ラムゼー氏（1989年ノーベル物理学賞受賞）は、レーザー科学アインシュタイン賞を受賞した時点で既にノーベル物理学賞を受賞していました。一方、セルジュ・アロシュ氏（2012年受賞）、ジョン・ホール氏（2005年受賞）、テオドール・ヘンシュ氏（2005年受賞）、カール・ワイマン氏（2001年受賞）、デービッド・ワインランド氏（2012年受賞）の5名は、レーザー科学アインシュタイン賞を受賞した後にノーベル物理学賞を受賞しています。

このように、本賞はノーベル賞受賞クラスの研究者を多数輩出しており、その短い歴史ながらも、レーザー科学および量子光学分野における国際的な権威ある賞として認識されていました。1999年をもって終了した理由は必ずしも明確ではありませんが、その功績は現代光学研究の発展史において重要な一ページを占めています。

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