ロストック音楽・演劇大学

ロストック音楽・演劇大学

ドイツ連邦共和国、メクレンブルク＝フォアポンメルン州の州都ロストック市に所在する州立の高等教育機関です。正式名称はドイツ語で Hochschule für Musik und Theater Rostock と称し、ドイツ国内に数ある州立音楽大学の中でも主要な24校の一つとして、ドイツ音楽大学学長協議会（Rektorenkonferenz der Musikhochschulen）に加盟しています。

概要と特徴

本学は、ヨーロッパ全域で高い人気を誇る教育機関です。世界各国から多くの学生が集まる点が大きな特徴であり、約38カ国から来訪した500名を超える学生が国際的な環境の中で学んでいます。年間を通じて、学内外で250回を超える多様な公演やイベントが開催され、学生たちに豊富な実践の機会を提供しています。また、バルト海沿岸地域における音楽教育機関の連携を目的として、1995年にロストックで設立された ABAM (Association of Baltic Academies of Music) の一員であり、構成校間での積極的な協力や交流が進められています。

沿革

ロストック音楽・演劇大学の設立は、二つの異なる教育機関の歴史を背景としています。音楽教育の系譜は、作曲家ルドルフ・ヴァーグナー＝レゲニー氏によって1947年に創設された音楽・演劇・舞踊大学に始まり、後にベルリンのハンス・アイスラー音楽大学の分校となりました。一方、演劇教育の分野は、1968年にロストック演劇学校として設立され、1980年からはベルリンのエルンスト・ブッシュ演劇大学の付属校として運営されていました。

これらの二つの学校が統合され、ロストック音楽・演劇大学として新たなスタートを切ったのは1994年です。この統合は、ケルン音楽大学の元教授である Prof. Wilfrid Jochims 氏の多大な尽力によって実現し、同氏が初代学長に就任しました。大学は設立当初、市内のUlmenstraßeとam Bussebartにある二つの既存施設を暫定的な学舎として利用していました。

学生数と教職員数の増加に伴い、既存の学舎が手狭になったため、1995年に歴史的な建造物である聖カタリーナ修道院（St. Katharinenstift）を大学の新しい本拠地として改修・利用することが決定されました。この大規模な改修工事は1997年から2000年にかけて行われ、2001年4月には、それまで分散していた大学機能が、美しく再生された聖カタリーナ修道院のキャンパスへと完全に移転しました。その後、2004年6月には Prof. Christfried Göckeritz 氏が新たに学長に就任しています。

学科構成

大学では、以下の主要な分野で教育プログラムを提供しています。

音楽学科
音楽学と音楽教育学科
演劇学科

主要学舎：聖カタリーナ修道院（St. Katharinenstift）

ロストック音楽・演劇大学の主要なキャンパスである聖カタリーナ修道院は、それ自体が非常に長い歴史を持つ建築物です。この修道院は、カトリックのフランシスコ会修道士によって1223年から1243年にかけて建設が始まり、その一部である聖カタリーナ教会（St. Ktharinen Kirche）は修道院の初期段階で建てられました。

宗教改革の影響により、1534年に修道士が追放された後、建物は救貧院として転用されました。1624年には孤児院としても利用が始まり、1677年の大火では教会堂の内陣が大きな被害を受けましたが、基礎や身廊の壁は一部残存しました。その後も建物の用途は変遷し、1728年からは孤児院の一部が監獄兼作業所として、1804年からは別の部分が教員養成学校や工業学校として使われました。ナポレオン戦争中は、一時的にフランス軍の野戦病院となった時期もあります。

1825年の改修を経て精神病院となり、メクレンブルク地方で最も古い精神病院の一つとなりましたが、20世紀初頭に閉鎖され、1990年まで老人ホームとして使用されていました。

1995年、メクレンブルク＝フォアポンメルン州政府は、ハンザ同盟都市ロストック市との合意のもと、この歴史的・文化的価値の高い建物をロストック音楽・演劇大学の新しい学舎として改築することを決定しました。1997年から2000年に及ぶ改修・増築工事は、Braun & Voigt建築設計事務所の設計に基づき、「新しいものと古いものを意図的に分け隔てる」という設計思想の下で行われました。これにより、歴史的な構造を尊重しつつ、現代の大学に必要な機能的な空間が創出されました。

2001年4月に正式な落成式が行われ、聖カタリーナ修道院は大学の新たな本拠地となりました。改修によって、中庭は屋外イベントに適した空間に、かつての食堂はオルガンザール（Orgelsaal）に、広大なゴシック様式の旧寄宿舎は室内楽専用のカンマームジークザール（Kammermusiksaal）へと生まれ変わりました。図書館は、アーチ型の天井を持つかつての懺悔の間を利用しており、集中して学習できる静穏な環境が提供されています。この聖カタリーナ修道院の再生は、ロストックの歴史的な街並みにとっても、そしてロストック音楽・演劇大学のアイデンティティにとっても、かけがえのない成果と誇りとなっています。

主要施設

聖カタリーナ修道院の学舎内には、主要な公演・練習施設が整備されています。

ザンクト・カタリーネンザール（St. Katharinensaal）: 300席から最大420席まで収容可能な多目的ホールです。劇場としてもコンサートホールとしても利用可能で、格納式のオーケストラピットや高度な音響・照明設備、デジタル録音スタジオなどを備え、様々なジャンルの公演に対応しています。
カンマームジークザール（Kammermusiksaal）: 客席数98の室内楽専用ホールです。歴史的な空間の雰囲気を保ちつつ、演奏に適した音響設計がなされています。
オルゲルザール（Orgelsaal）: こちらも客席数98の小ホールですが、特筆すべきはその名の通りオルガンが設置されている点です。オルガン演奏会や関連する授業、練習に利用されます。

関連人物

* ルドルフ・ヴァーグナー＝レゲニー: 作曲家。大学の前身となる音楽教育機関の設立に深く関わった人物です。

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