ロスト・バイ・デッド

ロスト・バイ・デッド

『ロスト・バイ・デッド』（LOST BY DEAD）は、2002年に制作され、翌2003年に劇場公開された日本のインディペンデント映画である。当時弱冠23歳だった辻岡正人が、自身にとって初の監督と主演を務めた意欲的な自主製作作品として知られる。

制作背景

映画『バレット・バレエ』や『グシャノビンヅメ』などに出演経験のある俳優、辻岡正人が、映画監督・塚本晋也の世界観に触発されたことから、本作の制作は始まった。彼は企画、脚本、監督、編集といった主要パートのほぼ全てを自ら手掛け、わずか4名のスタッフと共に、現代社会に息苦しさを感じ、鬱屈した日々を送る若者たちの姿を映像化した。極めて小規模な体制での自主映画制作であったため、制作スタッフの中には俳優として出演も兼任した者も少なくなかったという。しかし、その一方で、撮影現場では様々な困難に見舞われた。特に、出演者のモチベーション維持が難しく、急な降板が発生するなど、撮影プロセスは決して順調ではなかったと伝えられている。

内容

物語は、最愛の恋人を失った喪失感から立ち直れず、自己破壊的な行動に走る主人公の若者と、社会の片隅で暴力的な衝動に駆られながら生きる他の若者たちの、内面的な葛藤と苦悩を中心に描いている。絶望や虚無感を抱え、現実を持て余す登場人物たちの、破滅的な暴走や痛ましい姿が克明に描写される。その描写には、実験的でアナーキーな映像感覚と、粗い質感を持つモノクローム映像が用いられ、作品に独特の世界観を与えている。感情的な揺れ動きや暴力シーンが、トリッキーかつパンキッシュなスタイルで表現され、見る者に強い印象を残す。作品全体を通して、若者たちの生きづらさや社会への反抗、そして救いのない現実が、生々しくかつスタイリッシュに描かれているのが特徴である。

公開と評価

本作は完成後、いくつかの国際映画祭に出品された。モントリオール・ニュー・シネマ国際映画祭、ハンブルク国際映画祭、そしてポートベロー国際映画祭などで上映され、海外の観客にもその存在を知らしめた。国内では、2003年8月30日に東京都のシネマアートン下北沢にて劇場公開が実現した。ミニシアターでの上映ながら、若き才能による自主映画として注目を集めた。その後、オルスタック・ピクチャーズからDVDソフトとしてリリースされ、2004年3月25日に一般販売されたことで、より多くの映画ファンが本作を鑑賞する機会を得た。

キャスト・スタッフ

主演は監督自身である辻岡正人が務め、主人公のアキラを演じた。主要キャストには、真矢役の大澤真一郎、加奈役の板谷光子、真理役の佐藤麻由らが名を連ねている。前述の通り、監督の辻岡正人が、脚本、編集、撮影、美術、照明、録音、効果といった多くの技術的な役割を兼任し、まさに孤軍奮闘とも言える体制で制作が進められた。音楽は久保隆史（EARTHMAN）が担当し、作品の持つアンダーグラウンドな雰囲気を盛り上げている。製作・配給は辻岡プロダクションが行い、配給協力としてゼアリズエンタープライズが携わった。ソフト化はアイエイチクリエイトが発売元となり、オルスタック・ピクチャーズが販売を担当した。

本作は、当時23歳という若さで映画制作のほぼ全てを担った辻岡正人の出発点を示す作品であり、少ない予算と人員ながらも、自身の世界観を映像として表現しようとしたエネルギーが詰まっている。荒削りながらも、その後の彼のキャリアにおける表現の原点を見ることができる作品と言えるだろう。

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