ロッカー (世にも奇妙な物語)

ストーリー『ロッカー』の概要

1990年5月3日に放送されたフジテレビの『世にも奇妙な物語』の一編『ロッカー』は、主演の織田裕二が演じる産業スパイ・悟の運命を描いた作品です。この物語は、サスペンスと人間ドラマが入り交じった緊張感あふれる展開で、多くの視聴者に衝撃を与えました。

ストーリー展開

物語は、ある夜遅くの研究所から始まります。赤い帽子をかぶった主人公悟は、何とかデータを盗むために悪事を働いていました。しかし、運悪く、研究所職員である佐口邦夫に見つかってしまいます。二人はもみ合いの中で、悟は抵抗する邦夫を誤って殺害してしまいます。この事件の騒音に反応した警備員が近づく中、悟は自分の身を守るために近くのロッカーに隠れます。

しかし、そのロッカーが思いのほか頑丈で、滞在するうちに開かなくなってしまったことに悟は気付きます。閉じ込められた不安の中、外では警察が現場検証を進めています。ロッカーの内部には、邦夫と彼の婚約者と思われる女性の写真が貼られており、悟は自らの行動の結果を痛感します。

翌朝、警察はロッカーを開けようと試みますが、全く開かず、結局そのロッカーは業者によって引き取られることになります。悟は、何とか逃げられたことに安堵しますが、運び込まれた先は鉄のスクラップ処理場でした。悟は自らの運命を理解し、恐怖に駆られ「助けてくれ！」と叫びます。ロッカーは無情にも潰されていき、その中で悟は最期を迎える瞬間を感じ取ります。

だが、悟が意識を取り戻すと、彼は依然としてロッカーの中に生きていることに気づきます。最期だと思った瞬間は夢だったのか、彼は安心し笑い出します。しかし、外では再び潰そうとする声が聞こえ、悟は焦って再度「助けて！」と叫びます。

クライマックスと結末

物語はここから急展開を見せ、場面が変わります。潰されたロッカーと共に、立方体の鉄塊が集積場に置かれ、その上には赤い帽子が残されているのが見えます。この描写は、悟の運命がいかに最後に結実したかを象徴しています。また、物語の最後は、研究所職員の写真が無邪気に笑うという不気味な余韻を残し、視聴者に深い印象を与えることになりました。

キャストとスタッフ

この作品には、悟を演じる織田裕二をはじめ、佐口邦夫役の段田安則、池田刑事役の菅田俊などが出演しています。脚本は橋本以蔵と土屋斗紀雄、監督は瀧川治水が担当しており、制作はフジテレビとカノックスによって行われました。また、この物語はノベライズされ、1990年10月には太田出版から書籍としても刊行されています。

『ロッカー』は、ただのサスペンスに留まらず、主人公の内面的な葛藤や運命の不条理を巧みに描いた作品として、今なお語り継がれています。

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