ロドニー・ブルックス

ロドニー・アレン・ブルックスは、1954年12月30日にオーストラリアで生まれ、数学を学んだ後、スタンフォード大学でコンピュータビジョンの研究で博士号を取得しました。彼の初期の研究は、モデルベースの画像認識システム「ACRONYM」の開発に焦点を当てていました。

1980年代には、カーネギーメロン大学やMITでの研究員を経て、MITに着任。彼は「表象なき知能」という概念を提唱し、サブサンプション・アーキテクチャ（SA）を提案しました。このアーキテクチャは、従来の人工知能のトップダウンアプローチとは異なり、よりシンプルで自律的なロボット制御を可能にするものでした。当初、このアイデアは人工知能の主流派からは批判を受けましたが、彼の研究は後に広く認められるようになり、ロボティクス分野に大きな影響を与えました。

ブルックスは、学生たちと自律移動ロボットPollyや上半身型ヒューマノイドロボットCogなどの開発プロジェクトに取り組みました。また、1990年に設立したiRobot社では、SAを搭載した6足歩行ロボット「Genghis」を開発し、その技術は掃除ロボット「ルンバ」や軍事用ロボット「パックボット」にも応用されました。これらのロボットは、実際の現場で活躍し、彼の理論が現実世界で実証されることになりました。

また、ブルックスは1997年に自身の論文を題材にした映画『Fast, Cheap and Out of Control』にも出演しました。彼の指導学生には、ジョナサン・ハドソン・コネル、マヤ・マタリッチ、カルロ・マレイ、ヨーキー・マツオカ、シンシア・ブリジールなど、著名なロボット研究者が名を連ねています。

その後、ブルックスはiRobot社を退社し、2008年にリシンク・ロボティクス社を設立。同社では双腕ロボット「バクスター」や協働ロボット「ソイヤー」を開発し、産業用ロボットの分野にも進出しました。さらに、AI研究を行うトヨタ自動車の子会社にも関与しました。リシンク・ロボティクス社は2018年に廃業しましたが、ブルックスは2019年にヘンリック・クリステンセンと「ロバストAI」を設立し、AIの研究を継続しています。

ブルックスは、数々の賞を受賞しており、1991年には国際人工知能会議（IJCAI）のComputers and Thought Award、2014年にはエンゲルバーガー賞（リーダーシップ部門）などを受賞しています。また、IEEEやAAAIなどの主要な学術団体のフェローでもあります。彼の学術的な貢献は、ロボット工学と人工知能分野に多大な影響を与え続けています。

彼の主な著作には、『Model-based computer vision』や『Programming in Common LISP』、『Cambrian Intelligence』などがあり、これらの書籍はロボット研究者や学生にとって重要な参考資料となっています。また、彼の論文やインタビューは、ロボット工学、人工知能の未来について、多くの議論を喚起しています。

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