ロナルド・フェイギン

ロナルド・フェイギン（Ronald Fagin、1945年5月1日 - ）は、アメリカ合衆国の著名な計算機科学者であり、データベース研究者です。IBMアルマデン・リサーチ・センターの計算機科学基礎理論グループを統括する責任者として、長年にわたり研究活動を牽引してきました。彼の業績は、データベース理論、有限モデル理論、知識推論といった分野において、非常に重要な貢献をなしています。これらの分野における先駆的な研究成果は、多くの研究者や実務者に大きな影響を与え、学術界において広く認められています。

生い立ちと学歴

フェイギンは、オクラホマ州オクラホマシティで生まれました。ダートマス大学で学士号を取得した後、カリフォルニア大学バークレー校に進学し、ロバート・ヴォートの指導の下で研究に取り組み、1973年に博士号を取得しました。博士号取得後、同年にはIBMの研究部門に入社し、ニューヨーク州にあるトーマス・J・ワトソン研究所で2年間勤務しました。その後、1975年にカリフォルニア州サンノゼのIBMアルマデン・リサーチ・センターに移り、現在に至るまで、この場所を拠点に研究活動を続けています。

主要な業績

フェイギンの最も重要な業績の一つとして挙げられるのが、彼の博士論文で証明された「フェイギンの定理」です。この定理は、非決定性チューリングマシンによって多項式時間で解ける決定問題は、存在論的二階述語論理で表現できるということを示しており、存在論的二階述語論理が複雑性クラスNPと一致するという意味を持つものです。この定理は、有限モデル理論の分野に大きな影響を与え、その後の研究の方向性を決定づける重要な役割を果たしました。

また、フェイギンは一階述語論理における0-1法則の存在と、この法則を用いたデータベースクエリ言語の表現不可能性を証明したことでも知られています。この成果は、ロシアの科学者グレプスキーらによってわずかに早く証明されていましたが、フェイギンの証明も同様に重要な貢献とされています。

データベース理論においては、正規形、特に第4正規形の研究において、フェイギンは重要な貢献をしています。データベース設計における正規化の概念を深め、データの一貫性と効率性を向上させるための理論的な基盤を築きました。

学術活動

フェイギンは、研究活動だけでなく、学術界における貢献も顕著です。データベースシステムの原理に関するACMシンポジウム（1984年）、知識推論の理論的側面についての国際会議（1994年）、計算理論に関するACMシンポジウム（2005年）、データベース理論に関する国際会議（2009年）など、数々の重要な国際会議でプログラム委員長を務め、学術交流の促進に尽力しました。

受賞歴と栄誉

フェイギンの業績は、数々の賞と栄誉によって広く認められています。以下は、その主な受賞歴と栄誉です。

IBMアカデミー選考員
ACM SIGMOD エドガー・F・コッド 革新賞
ACMフェロー
IEEEフェロー
AAASフェロー
パリ大学名誉博士号
情報科学研究所のISI最多被引用著者
IBM最優秀技術革新賞（8回）
IBM最優秀技術功績賞
IBM supplemental Patent Issue Awards（2回）
IBM会社賞
ベストペーパー賞 - 人工知能に関する国際共同会議（1985年）
ベストペーパー賞 - データベースシステムの原理に関するACMシンポジウム（2001年）
ベストペーパー賞 - データベース理論に関する国際会議（2010年）
テスト・オブ・タイム賞 - データベースシステムの原理に関するACMシンポジウムの論文
IEEE技術功績賞
ゲーデル賞（2014年）

これらの受賞歴は、フェイギンの研究がいかに重要なものであったかを物語っています。特に、ゲーデル賞は、理論計算機科学における最も権威ある賞の一つであり、フェイギンの業績が学術界において高く評価されている証と言えるでしょう。

関連項目

フェイギンの定理
IBMアルマデン・リサーチ・センター

外部リンク

Ronald Fagin's Website at IBM

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