ロバート・メリル

ロバート・メリル（Robert Merrill）

ロバート・メリル（1917年6月4日 - 2004年10月23日）は、20世紀アメリカを代表するバリトン歌手の一人です。本名をモイシェ・ミラーといい、ニューヨーク市ブルックリン区に生まれました。

音楽への道のり

幼少期から、歌手であった母親から音楽の手ほどきを受け、芸術の世界に触れます。彼の人生がオペラへと決定的に傾いたのは、少年時代のある偶然の出来事でした。メトロポリタン歌劇場（Metropolitan Opera）のリハーサルに迷い込んだ際、当時名声を博していたバリトン歌手、ローレンス・ティベットがジュゼッペ・ヴェルディ作曲のオペラ《椿姫》におけるジェルモン役を歌うのを耳にし、その声と表現に強い感銘を受け、自らもオペラ歌手になることを決意しました。

オペラ歌手を目指す決意をしたものの、声楽の本格的なレッスンには費用が必要でした。そこでメリルは、セミプロフェッショナルとして野球の投手をして収入を得ながら、著名な声楽教師サミュエル・マルゴリスのもとで研鑽を積むという異色の道を歩みました。

オペラ歌手としてのキャリア

プロのオペラ歌手としてのキャリアは、1944年に幕を開けます。ヴェルディの代表作《アイーダ》にて、エチオピアの王アモナスロ役でオペラデビューを果たしました。この成功が認められ、翌1945年には、彼が少年時代に歌手を志すきっかけとなった場所、メトロポリタン歌劇場のオーディションに見事合格します。そして、同じ年、《椿姫》のジェルモン役で同歌劇場における記念すべき初舞台を踏みました。

メトロポリタン歌劇場は、その後、彼の主要な活躍の舞台となります。長年にわたり、ヴェルディをはじめとする様々なオペラ作品で重要なバリトン役を数多く務め、その力強く響き渡る声と確かな歌唱技術、そして舞台での存在感で、聴衆や評論家から高い評価を得ました。特にヴェルディの作品における彼の解釈は高く評価され、多くのオペラファンの記憶に残っています。

1976年にはメトロポリタン歌劇場のレギュラーメンバーとしては一線を退きますが、その後も歌手としての活動は継続しました。1983年には、メトロポリタン歌劇場の創立100周年を記念するコンサートに招かれ、再びその舞台に立ち、長年の功績に敬意を表されました。この出演は、彼とメトロポリタン歌劇場との深いつながりを象徴する出来事と言えるでしょう。

ロバート・メリルは、生涯を通じて音楽活動に情熱を注ぎ、多くの人々に感動を与えました。2004年10月23日、彼は活動拠点でもあったニューヨークにてその生涯を閉じました。彼の残した録音は、今日でも多くの音楽愛好家によって聴き継がれています。

脚注は省略します。

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