ロバート・モンロー

アメリカ合衆国の超心理学者であるロバート・モンロー（Robert A. Monroe, 1915年 10月30日 - 1995年 3月17日）は、自身の体外離脱体験を深く探求し、この変性意識状態に関する先駆的な研究を進めた人物です。彼は単なる体験者にとどまらず、体験を科学的・客観的な視点から検証し、その成果を基に世界的に知られるモンロー研究所を創設しました。

生涯とキャリア

ロバート・モンローは1915年、大学教授である父と内科医である母のもと、学者家系の環境で生まれ育ちました。彼はアメリカの伝統的な南部地方で少年時代を過ごし、幼い頃には高熱を伴う重い猩紅熱（しょうこうねつ）を患った経験があります。

成人後、彼は事業家として成功を収めました。その転機が訪れたのは42歳となる1958年のことです。当時、睡眠学習に関する研究を行っていた最中に、彼は初めて意識が体から離れるという不思議な体験をしました。この出来事をきっかけに、モンローは体外離脱現象の研究に没頭するようになります。

研究をさらに本格化させるため、彼は自身が社長を務める会社内に専門の研究部門を立ち上げました。この部門は後に独立し、1971年にはモンロー研究所として正式に設立されました。1979年には会社の社長職を辞任し、モンロー研究所はバージニア州郊外の現在の場所へと移転・独立し、研究活動の拠点としての体制を固めました。

彼はその後、20年以上にわたり研究に携わり続けました。その期間中に、自身の体外離脱体験の詳細な記録と科学的な検証結果をまとめた複数の著書を世に送り出しました。1995年 3月17日、モンローは肺炎による合併症のため79歳でその生涯を終えました。

研究内容と業績

ロバート・モンローの研究の中心は、1958年に始まった自身の体外離脱体験です。彼は生涯にわたり複数回の体外離脱を経験し、その都度、体験のプロセスやそこで起こった出来事を克明に記録しました。さらに、体験中に認識した場所や人物、会話、そして時間軸といった事柄を、現実世界の情報と照らし合わせることで検証を試みました。

単なる主観的な体験談に終わらせることなく、モンローは体外離脱体験時の身体的な状態を客観的に測定するアプローチも採用しました。心電図や脳波計などの機器を用いて、心拍数、血圧、脳波といった生理学的データを計測し、統計的な分析を進めたのです。

彼の研究は、医学博士や心理学者といった第三者の立ち会いのもと、実験形式でも行われました。ある実験では、「博士と私は同時に、モンローの上半身が熱波のようにゆがんだ印象を受けた。下半身は普通にはっきり見えていた。そのゆがみはおよそ二分続き、実験は終わった。」という、興味深い観察結果が記録されています。また、1965年にはヴァージニア医科大学の脳波検査室で計8回の実験を実施し、当初は失敗が続いたものの、8日目の夜に2回の短い離脱に成功したと報告しています。このように、彼は幾度か第三者の協力を得ながら検証実験を行いました。

1971年に設立されたモンロー研究所は、彼の研究活動の基盤となりました。ここで彼は、Hemi-Sync（ヘミシンク）と呼ばれる独自の音響技術を開発し、特許を取得しました。これは、特定の周波数の音を聞くことで、左右の脳半球の活動を同調させ、体外離脱を含む特定の変性意識状態へと誘導することを目的とした技術です。

主要な著作

モンローは自身の体験と研究成果をまとめた著作を複数刊行しています（括弧内は日本語版の出版年）。

Journeys Out of the Body（『体外への旅』1985年・抄訳版 / 2007年・完全翻訳版）：体外離脱体験の始まりと、初期の体験記録、そしてその検証について詳細に記述されています。
Far Journeys（『魂の体外旅行』1990年）：体外離脱によって到達したとされる、より広範で非物質的な領域での体験が描かれています。
* Ultimate Journey（『究極の旅』1995年）：意識の探求の最終段階、存在のより深い側面に関する思索と体験が記されています。

これらの著作は、体外離脱や意識の可能性に関心を持つ多くの人々に影響を与えています。

ロバート・モンローの研究とモンロー研究所の活動は、超心理学や変性意識状態の研究分野において、体験と科学的アプローチを結びつけようとした重要な試みとして位置づけられています。彼の開発したヘミシンク技術は、現在も意識探索のためのツールとして利用されています。

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