ロバート・B・ライシュ

ロバート・バーナード・ライシュ：格差社会を予見した経済学者

ロバート・バーナード・ライシュ（Robert Bernard Reich）は、1946年生まれのアメリカ合衆国の著名な経済学者、文筆家であり、カリフォルニア大学バークレー校の公共政策大学院教授を務めています。ハーバード大学ケネディスクールやブランダイス大学社会政策大学院でも教鞭を執り、ビル・クリントン政権下では労働長官を務めるなど、学界と政界の両方で重要な役割を果たしてきました。

生い立ちと学歴

ライシュはペンシルベニア州スクラントンで、東欧系ユダヤ人の血を引く家庭に生まれました。ダートマス大学を優秀な成績で卒業後、Rhodes Scholarshipを得てオクスフォード大学で哲学、政治学、経済学を学びました。さらにイェール・ロースクールで法務博士号を取得し、ビル・クリントンやヒラリー・クリントンといった著名人と同級生でした。

キャリア

法務博士号取得後は、第1巡回区米国控訴裁判所やアメリカ合衆国法務次官補として勤務した後、ジミー・カーター大統領から連邦通商委員会政策計画スタッフの管理者に指名されました。1980年代から1990年代にかけては、ハーバード大学やブランダイス大学で教鞭を執り、1993年から1997年までビル・クリントン政権下で労働長官を務めました。2006年からはカリフォルニア大学バークレー校で教鞭を執っています。

主な業績：格差社会の予見

ライシュの最も重要な業績の一つは、1991年に発表した『ザ・ワーク・オブ・ネーションズ』において、アメリカ社会における格差の拡大を予見したことです。彼は、アメリカの富が人口の2割に過ぎない「シンボリック・アナリスト」（知識労働者）に集中し、それ以外の「対人サービス業者」や「ルーティン肉体労働者」との断絶が激しくなると指摘しました。この分析は、現代社会における格差問題を考える上で非常に重要な視点を提供しています。

シンボリック・アナリストとは、問題を発見し、必要な人材、モノ、資金、情報などを集めて問題を解決することで富を得る人々を指します。彼らは、知識や創造性を活用して付加価値を生み出すことができるため、グローバル化が進む現代経済においてますます重要な存在となっています。

著書と社会への影響

ライシュは多数の著書を通じて、経済格差や資本主義の問題点について積極的に発言しています。主な著書には、『ザ・ワーク・オブ・ネーションズ』、『暴走する資本主義』、『余震(アフターショック) そして中間層がいなくなる』、『最後の資本主義』などがあります。これらの著書は、日本でも翻訳されており、多くの読者に影響を与えています。

また、彼のドキュメンタリー映画『みんなのための資本論』（Inequality for All）は、アメリカの経済格差を分析し、益々豊かになる富裕層と貧しくなる中間層の状況を取り上げています。この映画は、格差問題に対する社会的な関心を高める上で大きな役割を果たしました。

日本への影響

ライシュの思想は、日本の経済学者や評論家にも影響を与えています。竹村健一は『シンボル・アナリストの時代』でライシュの考え方を紹介し、勝間和代は愛読書としてライシュの本を挙げています。栗本慎一郎も『大転換の予兆』などで「シンボリック・アナリスト」に注目するなど、日本においてもライシュの分析は重要な示唆を与えています。

まとめ

ロバート・ライシュは、経済学者、文筆家、そして政策立案者として、現代社会の重要な課題である格差問題に長年取り組んできました。彼の著作や活動は、私たちがより公正で持続可能な社会を築くために、多くの示唆を与えてくれるでしょう。

US Department of Labor biography
UC Berkeley biography
*robertreich.org biography

もう一度検索