ロベルト・アゼベド

ロベルト・アゼベード

ロベルト・カルヴァーリョ・デ・アゼベード（Roberto Carvalho de Azevêdo）は、1957年10月3日にブラジルで生まれた外交官です。長年にわたり母国の外交畑で経験を積み、特に国際経済や貿易交渉の分野でその手腕を発揮しました。彼のキャリアの頂点の一つとして、世界貿易機関（WTO）の事務局長を務めたことが挙げられます。

生い立ちと教育

アゼベード氏は、首都ブラジリアのブラジリア大学で電気工学を学びました。その後、外交官を養成する名門機関であるリオブランコ研究所で国際関係学を修め、外交の道に進みました。母語であるポルトガル語に加え、英語、フランス語、スペイン語に堪能であり、多言語能力は国際交渉の場で大きな強みとなりました。

外交官としての歩み

1988年、アゼベード氏は最初の在外勤務地としてアメリカ合衆国の首都ワシントンD.C.に赴任しました。その後、ウルグアイの首都モンテビデオにあるブラジル大使館での勤務を経て、1997年にはスイスのジュネーヴに駐在するブラジルの常駐代表部に籍を置きました。

ブラジル本国では、外務省内で重要な役割を担いました。2001年から2005年にかけては、紛争解決ユニットの責任者として、WTOにおける多くの紛争案件に関与し、ブラジル側の主任インテグレターとして活躍しました。また、WTOの紛争解決パネルに参加するなど、国際貿易紛争の実務に深く携わりました。

2006年から2008年には、外務省において経済技術担当の次官を務め、貿易交渉担当者としても陣頭指揮を執りました。この期間に培われた経験は、その後の国際舞台での活動に大きく影響を与えました。

2008年からは、再びジュネーヴに戻り、国際連合をはじめとする国際機関に対するブラジルの大使、そしてWTO常任代表として、多国間交渉の最前線でブラジルの国益を代表しました。

世界貿易機関（WTO）事務局長として

2013年、アゼベード氏は世界貿易機関（WTO）の事務局長選に立候補しました。当時、パスカル・ラミー氏の任期満了に伴い、9名の候補者がポストを争いました。選出プロセスが進む中で、アゼベード氏が優位にあることが伝えられ、ブラジル政府はWTOの公式発表に先立ってその勝利を発表しました。

2013年5月8日、選出委員会の公式発表により、アゼベード氏が候補者として宣言され、同年5月14日のWTO一般理事会での正式な選挙を経て、次期事務局長への就任が決定しました。そして、2013年9月1日、彼は正式に第6代WTO事務局長に就任しました。

アゼベード氏の事務局長在任中には、WTOにとって重要な進展がありました。特に、2013年12月にバリで開催された第9回WTO閣僚会議で採択された貿易円滑化協定を含む「バリ合意」は、彼のリーダーシップのもとで実現した大きな成果の一つとされています。

任期中の辞任とその後のキャリア

2020年5月14日、アゼベード氏はWTO全加盟国との電話会議を通じて、2期目の任期の終盤となる2020年8月31日付で事務局長を辞任することを表明しました。これは、彼の2期目の任期が満了するちょうど1年前の出来事でした。

WTO事務局長を退任した翌日の2020年9月1日、アゼベード氏は新たなキャリアをスタートさせました。彼は、世界的な食品・飲料企業であるペプシコ社の副社長兼最高企業行動責任者（Chief Corporate Affairs Officer、CCAO）に就任し、ビジネスの世界でその経験と知識を活かすこととなりました。

家族

アゼベード氏は、同じく外交官であるマリア・ナザレスファラニ・アゼベド氏と結婚しており、二人の娘がいます。家族もまた国際的な環境で生活してきました。

ロベルト・アゼベード氏は、ブラジル人外交官として、そして国際機関のリーダーとして、世界の貿易システムに深く関与し、その発展に貢献した人物です。彼の経歴は、多国間交渉と国際協力の重要性を示しています。

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