ロベール・アンテルム

ロベール・アンテルム（1917年1月5日 - 1990年10月26日）は、フランスの作家、詩人であり、第二次世界大戦中にナチスの強制収容所に収容された経験を持つ人物です。彼の作品、特に『人類』は、収容所での非人間的な状況下における人間の尊厳と抵抗を描き出し、戦後文学における重要な位置を占めています。

コルシカ島のサルテーヌで生まれたアンテルムは、1939年に作家のマルグリット・デュラスと結婚しました。第二次世界大戦中、夫妻は共にナチス占領下のフランスでレジスタンス活動に参加しましたが、1944年にゲシュタポによって逮捕され、コンピエーニュ収容所を経てブーヘンヴァルト強制収容所、そしてダッハウ強制収容所へと移送されました。

収容所での過酷な体験は、アンテルムの人生と作品に深い影を落としました。終戦後、彼はミッテランによって発見され、パリへ帰還。その体験をもとに1947年に出版された『人類』は、強制収容所における人間の極限状態を描き出し、大きな反響を呼びました。この作品は、収容所で亡くなった彼の妹、マリー＝ルイーズに捧げられています。

アンテルムは、妻マルグリットと共に「シテ・ユニヴェルセル」という出版社を設立しましたが、数作品を出版しただけで活動を終えました。夫婦は後に離婚しましたが、共同で戯曲を制作するなど、その後も仕事を共にすることがありました。

政治活動にも積極的に参加し、フランス共産党に入党した時期もありましたが、後に離党。アルジェリア戦争中には、「アルジェリア戦争における不服従の権利宣言」（「121人宣言」）に署名するなど、社会的な不正義に対して声を上げ続けました。

1983年に脳血管障害を患い、1990年に死去。彼の死後、未発表原稿や彼に関するエッセイなどをまとめた書籍が出版され、その思想と文学的遺産が再評価されています。

アンテルムの言葉「人間とは絶滅に対する絶対的で確固たる抵抗にほかならない」は、彼の作品全体を貫くテーマを象徴しています。彼は、強制収容所という極限状態においても失われることのない人間の尊厳と、生きる意味を追求し続けました。

彼の作品は、ホロコースト文学の重要な作品として、また人間の本質を深く問いかける文学作品として、今日でも広く読まれています。パリには彼の名を冠した広場があり、その功績を称えています。

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