ロベール・マレ＝ステヴァンス

ロベール・マレ＝ステヴァンス：モダニズム建築の巨匠

ロベール・マレ＝ステヴァンス (1886-1945) は、20世紀を代表するフランスの建築家です。パリに生まれ、父は著名なアートコレクターであったことから、幼い頃から芸術に囲まれた環境で育ちました。エコール・スペシャル・ダルシテクチュールで建築を学び、ル・コルビュジエと同世代として活躍しました。1929年には、コルビュジエらと共に現代芸術家協会UAMを設立し、会長に就任しています。

アール・ヌーヴォーへの批判と機能美

マレ＝ステヴァンスは、アール・ヌーヴォーの過剰な装飾を批判し、金属フレームや鉄筋コンクリートを用いた近代的な建築を追求しました。しかし、彼の作品は単なる機能主義に留まらず、伝統的な装飾要素も巧みに取り入れ、洗練された機能美を追求している点が特徴です。このスタイルは「モデルヌ」と呼ばれ、独特の美意識を確立しました。

建築作品：集合住宅から別荘まで

マレ＝ステヴァンスの代表作として挙げられるのは、パリ16区オートゥイユ地区のマレ＝ステヴァンス通りの集合住宅です。自身の事務所と友人らの住宅を設計したこの建物群は、白い立方体を組み合わせたシンプルな構成が印象的で、彼が開発した私道に面しています。

他にも、著名人の別荘や住宅群を数多く手掛けています。ポール・ポワレ別荘（1925年）、スーラ通りの住宅群（1926年）、ライフェンベルク邸（1927年）、シャルル・ド・ノアイユ別邸（1928年）、そして、特に有名なヴィラ・カヴロワ（1932年）などが挙げられます。これらの作品は、幾何学的な構成と洗練されたフォルム、そして機能性へのこだわりが見て取れます。

家具デザインと映画美術

建築以外にも、マレ＝ステヴァンスは家具デザインや映画美術にも才能を発揮しました。1932年にデザインしたスタッキングチェア「CROIX」や、代表作である「ステヴァンス・チェアC」は、現在でも高く評価されています。「CROIX」はヴィトラデザインミュージアムにも収蔵されています。

映画では、1923年の前衛映画『イニューメン、非情の女』や、1929年の『サイコロ城の秘密』のセットデザインを担当しました。南仏イエールにあるノアイユ子爵夫妻の別邸、ヴィラ・ノアイユで撮影された『サイコロ城の秘密』では、その独特な建築様式が映画の世界観を彩りました。

パリ万博と「コンクリートの木」

1925年のパリ万国博覧会（アール・デコ博）では、ジョエル・マルテルらと共同で、「コンクリートの木」と名付けられたオブジェを配した小庭園を出展しました。この作品は、マレ＝ステヴァンスのモダニズムへの関心を示す象徴的な存在と言えるでしょう。

まとめ：時代を超えるデザイン

ロベール・マレ＝ステヴァンスは、アール・デコ様式の影響を受けつつも、独自のモダニズム建築を確立した重要な建築家です。彼の作品は、幾何学的な構成と機能性、そして洗練された美しさが見事に調和しており、現在でも高い評価を得ています。建築、家具デザイン、映画美術と、多方面で才能を発揮した彼の功績は、現代デザインにも大きな影響を与え続けていると言えるでしょう。そのデザイン哲学は、時代を超えて人々を魅了し続けています。

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