ロリス科

ロリス科（Lorisidae）

この項目では、哺乳綱霊長目に属するロリス科について解説します。名前の由来や分類の歴史、現在の研究状況などを含めて紹介します。

名前の由来

ロリス科の名前は、オランダ語で「道化師」を意味する「Loris」という言葉に由来しています。彼らの特徴的な大きな目や顔つきが、道化師を思わせることから名付けられたと考えられています。

分類上の位置づけと歴史

ロリス科は、哺乳類の大きなグループである霊長目の一群です。

学名に関しては、当初は「Loridae」と記載されていましたが、より広く使用されるようになった「Lorisidae」という名称が、後に国際動物命名規約委員会（ICZN）の決定により正式に認められ、現在も使用されています。

霊長目の中でも、ロリス科をガラゴ科と共に「ロリス上科（Lorisoidea）」として位置づけ、キツネザル型下目に分類するという見解もあります。かつてはガラゴ科に属する仲間もロリス科に含め、「ガラゴ亜科（Galaginae）」として扱われていた時代もありましたが、現在ではロリス科とガラゴ科はそれぞれ独立した科として扱われています。

ロリス科の内部分類については、アジアに分布するグループを「ロリス亜科（Lorisinae）」、アフリカに分布するグループを「ポト亜科（Perodicticinae）」として二つの亜科に分ける考え方があります。

系統関係に関する近年の知見

この科の仲間たちが、系統的にどのような関係にあるのかについては、現在も研究が進められている分野であり、定説がない部分が多く存在します。特に、分子レベルでの解析による系統関係の解明が試みられていますが、複雑な結果が得られています。

例えば、2015年に行われたある分子系統解析では、ガラゴ科、ロリス亜科、ポト亜科はそれぞれ独立したまとまり（単系統群）である可能性が高いことが示されました。しかし、同時にアフリカのポト亜科に属する一部の種がガラゴ科に近縁である可能性も示唆され、その結果としてロリス科全体としては必ずしも一つのまとまったグループ（偽系統群）ではないかもしれないという解析結果も得られています。この解析では、ポト亜科と他のグループの分岐年代が比較的古い（約3800万年前）ことが示唆されたことから、ポト亜科をロリス科から独立させて新たな科とする可能性も指摘されています。

また、特定のグループ内でも分類の見直しが進んでいます。ポト属（Perodicticus）においては、一部の亜種を独立した種として扱うべきだという考え方が研究者間で議論されており、先述の2015年の分子系統解析の結果からは、ヒガシポト（P. ibeanus）とミルンエドワーズポト（P. edwardsi）を独立種とみなす見解が支持されています。さらに、1996年に記載されたニセポト（Pseudopotto martini）の分類上の位置についても、ポト属に含めるなど、まだ研究者の間で一致した見解が得られていません。

スローロリス属（Nycticebus）に関しては、レッサースローロリス（Xanthonycticebus pygmaeus）が他のスローロリスとは異なる系統に属することが示唆されたため、2022年にはこの種のみを新たな独立した属「Xanthonycticebus」とする提案がなされました。

このように、ロリス科の正確な系統関係や分類については、現在も活発な研究が行われており、今後も分類が見直される可能性があります。

主な分類群の例

最新の研究成果やリストに基づくと、ロリス科は大きく二つの亜科に分けられ、いくつかの属が含まれています（以下の分類は例であり、研究の進展により変更される可能性があります）。

• - ロリス亜科（Lorisinae）

- *スレンダーロリス属（Loris）: ハイイロスレンダーロリス、アカスレンダーロリスなど。
- スローロリス属（Nycticebus）: ベンガルスローロリス、スンダスローロリスなど複数の種が含まれます。
- Xanthonycticebus: レッサースローロリスを含む単型属です。

• - ポト亜科（Perodicticinae）

- アンワンティボ属（Arctocebus）: ゴールデンアンワンティボ、アンワンティボなど。
- ポト属（Perodicticus）*: ポト、ヒガシポト、ミルンエドワーズポトなど。

これらの分類群に含まれる具体的な種の数や種名も、研究の進展によって見直されることがあります。

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