ロレンツィーノ・デ・メディチ

ロレンツィーノ・デ・メディチ（1514年3月23日 - 1548年2月26日）は、イタリア・ルネサンス期にフィレンツェで活躍した人物です。政治家、著述家としての顔を持ち、その生涯は波乱に満ちていました。彼は「ロレンザッチョ」とも呼ばれ、フィレンツェ公アレッサンドロ・デ・メディチを暗殺した実行犯として広く知られています。

生い立ちと青年期

ロレンツィーノは、メディチ家の傍系、ピエルフランチェスコ・デ・メディチとマリア・ソデリーニの間に生まれました。幼少期は、同じくメディチ家の一族であるコジモ（後のコジモ1世）やアレッサンドロとともに、カメリーノで教育を受けました。しかし、ロレンツィーノとアレッサンドロは、しばしば乱痴気騒ぎを起こし、その醜聞が度々取り沙汰されました。1526年には、フィレンツェを攻撃しようとする傭兵軍から逃れるため、コジモと共にヴェネツィアへ避難しました。

ロレンツィーノは、メディチ家がフィレンツェから追放された際には、教皇クレメンス7世の権威を打ち破ったローマ略奪から一族を救うなど、複雑な役割を果たしました。ヴェネト、ボローニャ、ローマで生活した後、1530年にフィレンツェに帰還しました。当時、神聖ローマ皇帝カール5世によるフィレンツェ包囲が解かれ、アレッサンドロがフィレンツェ公に任命されたばかりでした。

アレッサンドロ暗殺

おそらくフィリッポ・ストロッツィの唆しにより、ロレンツィーノは1537年1月5日の夜、アレッサンドロを暗殺しました。彼は、妹ラウドミアとの関係を仲介すると偽ってアレッサンドロを誘い出し、罠にはめたのです。暗殺後、ロレンツィーノは報復を恐れ、ボローニャ、イスタンブール、フランス、ヴェネツィアと各地を転々と逃亡しました。その間、彼は自らの行為を正当化する文書を公表し、アレッサンドロの暗殺は人類の自由のための行動であり、マルクス・ユニウス・ブルートゥスの後継者として専制君主を倒したと主張しました。

暗殺後の逃亡生活と最期

ロレンツィーノは、逃亡生活の中で作家としても活動し、劇作『Aridosio』は高い評価を受けました。しかし、コジモ1世は彼を暗殺の首謀者として許さず、1548年にヴェネツィアに刺客を送り込み、ロレンツィーノは暗殺されました。彼は、愛人エレナ・バロッツィの家の前で、ジョヴァンニ・ロッティーニが雇った暗殺者によって命を奪われたのです。エレナとの間には、庶子のロレンツィーナがいました。ロレンツィーナは、父の死後、親族に育てられ、後にローマ貴族と結婚しました。

暗殺の影響と評価

ロレンツィーノによる専制君主アレッサンドロの死は、フィレンツェ市民に一時的な自由と歓喜をもたらしました。しかし、アレッサンドロには嫡子がいなかったため、後継者としてメディチ家傍系のコジモ1世がトスカーナ大公に選ばれ、メディチ家の支配は継続されることとなりました。ロレンツィーノは、暗殺者としての側面が強調されがちですが、彼が残した劇作は、後世に評価されています。彼は、フィレンツェの複雑な政治状況の中で、自己の理想と現実の間で苦悩した人物として、歴史に名を刻んでいます。

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