ロングモーン蒸留所

ロングモーン蒸留所：スペイサイドを代表する原酒の聖地

ロングモーン蒸留所は、スコットランドのスペイサイド地方に位置する、歴史あるスコッチウイスキー蒸留所です。1894年の創業以来、ブレンデッドウイスキーの原酒として高い評価を受け、特にシーバスリーガルなどの主要ブランドを支える重要な役割を担っています。

歴史

1894年、ジョン・ダフらによって「ロングモーン・グレンリベット・ディスティラリー社」として設立されました。当時、ウイスキーブームに沸くハイランド地方で、ジョン・ダフはグレンロッシー蒸留所に続き、ロングモーンとベンリアックという二つの蒸留所を同時に創業しました。肥沃な穀倉地帯であるエルギン周辺、そしてロングモーン周辺で採取できるピートは、ウイスキー造りに最適な環境でした。

創業から5年後、ジョン・ダフは経営権を取得しますが、1898年のパティソン事件の影響で1900年に倒産。その後、ジェームズ・R・グラントに買収され、1970年代まで同家による経営が続きました。1919年には、ニッカウヰスキーの創業者である竹鶴政孝がウイスキー製造の実習を行っています。1972年には、グレングラント蒸留所、グレンリベット蒸留所と経営統合し、1977年にはシーグラム社の傘下に入り、2001年以降はペルノ・リカール社の傘下となっています。創業以来、一度も生産を停止していないという珍しい歴史を持っています。

製造

年間生産能力は450万リットル。1970年代に製麦を外部委託してからは、8.5トンの麦芽を一度に仕込んでいます。ブリッグス社製のマッシュタンを使用し、糖化には5時間を要します。10基のステンレス製ウォッシュバックで約50時間の発酵が行われます。

蒸留には、タマネギ型のストレートヘッド型ポットスチルを8基使用。初留釜4基、再留釜4基で、それぞれ形状がわずかに異なります。加熱方式は、かつては初留に直火焚きを採用していましたが、現在はエクスターナルヒーティング方式となっています。初留釜と再留釜の部屋が分かれているのは、直火焚き時代の名残です。

熟成は、敷地内のダンネージ式熟成庫で行われますが、生産されたウイスキーはペルノ・リカール社の熟成庫へ輸送されます。

製品

ロングモーンのウイスキーは、ブレンダーから高い評価を受けており、シーバスリーガルやロイヤルサルートなどのブレンデッドウイスキーに広く使用されています。シングルモルトとしての流通量は限られており、インディペンデント・ボトラーからのリリースも多くはありません。

ペルノ・リカールが展開する「シークレット・スペイサイド」シリーズから、18年、23年、25年熟成のシングルモルトが販売されています。

評論家やバーテンダーからも高い評価を受けており、その味わいは「スペイサイドモルトの到達点」「花の香り漂うクラシックなスペイサイドモルト」「甘みが強くシナモンやリンゴのような香り」と評されています。

評価

ロングモーンは、その品質の高さからブレンダーに重宝されています。シーバスブラザーズ社のマスターブレンダー、コリン・スコットは「ロングモーンはまさに宝だ」と述べています。マイケル・ジャクソンは、「シリアル系の麦芽っぽさ、蝋蜜を思い出させるフレーバー、そして、エステル風のフルーティさが特徴的」と評しています。

ロングモーンは、スペイサイドを代表する蒸留所として、その名を世界に轟かせています。

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