ロードムービー (小説)

概要

辻村深月による『ロードムービー』は、彼女の初の短編集であり、デビュー作『冷たい校舎の時は止まる』の登場人物たちを再び登場させる心温まる作品です。2010年9月に講談社ノベルスとして発表された本書には、3つの短編が収められ、さらにその後の版では「街灯」と「トーキョー語り」の2作品が新たに加わりました。2013年には、児童書版として再構成され、挿絵がtoi8によって描かれたことでも話題になりました。

収録作品

本短編集には以下の短編が収められています。
1. 街灯（書き下ろし）
2. ロードムービー（『esora』vol.5）
3. 道の先（『esora』vol.5）
4. トーキョー語り（『メフィスト』2009年1月号）
5. 雪の降る道（『メフィスト』2005年1月号）

各話のあらすじと主要な登場人物

ロードムービー

物語は、明るく活発な性格を持つトシと、内気な性格のワタルの友情を描いています。彼らはS県へ家出を計画します。2人の絆は一見対照的な性格から生まれたもので、互いに深い信頼を寄せ合っています。この短編では、『冷たい校舎の時は止まる』のキャラクターたちも登場し、一層物語に深みを与えます。

主要登場人物

• - トシ（本名：諏訪慧恵）

彼は運動神経が抜群で人気者ですが、家族との関係は複雑。父親は政治家で、しばしば家を空けており、母親は医師として多忙を極めています。

• - ワタル（新田アカリ）

トシの親友であり、彼と一緒に冒険へ出かける仲間です。スリリングな家出の旅の中で、彼らの友情が試され、深まっていきます。

道の先

この短編は、進学塾でアルバイトをしている大学生「俺」が主人公です。ある日、彼は優等生の女子生徒・大宮千晶に関する噂を耳にします。彼女が困っていることに気づかない彼ですが、実は千晶は彼に恋愛感情を抱いています。友情と恋愛をテーマにした物語が展開され、思わぬドラマが生まれます。

トーキョー語り

田舎の高校に転校してきた久住薫子と、彼女に興味を持つ一美、そして周囲から避けられる遠山という3人の女子高生の視点から描かれています。薫子が持つ東京のイメージは、周囲との関係にどのように影響するのか。友情と嫉妬が交錯する中で彼女たちの物語が展開していきます。

雪の降る道

この短編では、主にヒロくんとその幼馴染みの「みーちゃん」の関係が描かれています。ヒロくんの体調不良が続く中、彼は脱け殻のようになってしまった「みーちゃん」を探すため、兄貴的存在のスガ兄と共に冒険に出ます。この物語は、失われたものを探し求める心情を描写しています。

総評

『ロードムービー』は、さまざまな形の関係や絆を描き、さまざまな読者に心を打つ作品です。情緒豊かな文体で描かれる人物たちの葛藤や成長は、読者に感動を与え、彼らの物語を通じて自身の過去を振り返りたくなるような力があります。辻村深月の力強い筆致により、短編それぞれの独立した物語が実に印象的に仕上げられています。

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