ローマに散る

ローマに散る：権力と陰謀が渦巻くイタリアン・スリラー

1976年、イタリアで製作されたスリラー映画『ローマに散る』（原題：Cadaveri eccellenti）は、レオナルド・シャーシャの小説「権力の朝」を原作とするポリティカル・スリラーです。巨匠フランチェスコ・ロージ監督が、イタリア社会の暗部を鮮やかに描き出した傑作として知られています。

物語は、ローマ近郊で法曹界の重鎮である高官たちが次々と殺害されるという衝撃的な事件から始まります。捜査の指揮を執るのは、ローマ警察のロガス警部。彼は綿密な捜査を進める中で、ある男、クレスに注目します。クレスは過去に妻殺しの罪で有罪判決を受けていますが、決定的な証拠はありません。しかし、被害者5人全員がクレスの裁判を担当した判事だったという事実が、事件に不可解な影を落とします。

ロガス警部は、クレスの裁判を担当した判事の一人で、現在最高裁長官を務めるリケスに危険を知らせようとします。しかし、捜査を進めるにつれ、ロガス警部は事件の背後に国家権力が関与していることに気づきます。リケス邸を訪れたロガスは、裏門から軍の高官や警視総監の車両が出入りする様子を目撃し、事件の背後に隠された恐るべき陰謀を確信するのです。

やがて、ロガス警部自身も危険にさらされます。権力者の策略と、隠された真実を暴こうとする警部の戦いは、息詰まるサスペンスとスリリングな展開で描かれ、観客を最後まで魅了します。

キャストには、リノ・ヴァンチュラ（ロガス警部）、マックス・フォン・シドー（リケス最高裁長官）、ティノ・カラーロ（警視総監）など、実力派俳優が多数出演。彼らの迫真の演技が、映画に深みと重厚感を与えています。

『ローマに散る』は、単なる犯罪サスペンスにとどまらず、イタリア社会の政治的腐敗や権力構造の闇を鋭くえぐり出す社会派作品でもあります。国家権力による陰謀、正義と不正の対立、そして個人の運命が複雑に絡み合い、観る者に深い余韻を残します。

この映画は、1976年の第29回カンヌ国際映画祭に特別招待作品として出品され、高い評価を受けました。また、イタリアの映画賞であるダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞では、作品賞と監督賞を受賞するなど、その芸術性と社会性を認められています。

もしあなたが、スリリングな展開と社会派ドラマを融合させた、重厚なイタリアン・スリラーに興味があるなら、『ローマに散る』は必見の作品です。複雑な人間関係、陰謀、そして正義の追求が、あなたをイタリアの暗い影へと誘います。

主なキャスト

ロガス警部：リノ・ヴァンチュラ
リケス最高裁長官：マックス・フォン・シドー
警視総監：ティノ・カラーロ
ヴァルガ検事：シャルル・ヴァネル
ラスト判事：アラン・キュニー
クサーノ：ルイジ・ピスティッリ
特捜刑事：レナート・サルヴァトーリ
売春婦：ティナ・オーモン
マルセル・ボズフィ
公安担当大臣：フェルナンド・レイ
サンツァ判事：フランチェスコ・カッラーリ

受賞歴

第29回カンヌ国際映画祭 特別招待作品
* 第21回ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞 作品賞、監督賞（フランチェスコ・ロージ）

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