ローマ帝国の滅亡

ローマ帝国の滅亡：衰亡期のローマを彩る壮大な歴史劇

1964年公開のアメリカ映画『ローマ帝国の滅亡』（原題：The Fall of the Roman Empire）は、古代ローマ帝国の衰亡期を舞台にした歴史スペクタクル超大作です。サミュエル・ブロンストンが製作、アンソニー・マンが監督を務め、後の『グラディエーター』にも通じるテーマとスケールで、観客を古代ローマの世界へといざないます。

物語は、五賢帝時代後のローマ帝国を描きます。 領土拡大に限界を感じ始めた帝国は、蛮族ババリアと東ペルシャの脅威にさらされていました。病に臥せっているアウレリウス帝は、暗愚な息子コンモドゥスではなく、有能な将軍リヴィウスに帝位を譲ろうとします。しかし、アウレリウス帝は暗殺され、コンモドゥスが帝位を継承。リヴィウスは最高司令官に任命されます。

アウレリウス帝の娘ルシラは、ローマとペルシャの緩衝地帯であるアルメニア王への政略結婚を強いられます。一方、ローマの高圧的な政策に不満を抱いたババリアは侵攻を開始しようとしますが、哲学者ティモニデスの説得によって一旦は思いとどまります。しかし、ババリアを殲滅すべきだと主張する元老院議員と、融和を訴えるリヴィウスとの間で対立が生まれます。最終的に、リヴィウスの融和策が採用されます。

東方の属領では、コンモドゥスの重税に反発した反乱が勃発。リヴィウスは反乱軍を鎮圧しますが、コンモドゥスはリヴィウスを皇帝として共同統治しようと提案します。しかし、リヴィウスはこれを拒否し、ローマへの進軍を開始します。

ローマでは食糧不足と疫病が蔓延する中、ババリアから救援の手が差し伸べられます。しかし、コンモドゥスはババリア人を虐殺し、ティモニデスをも殺害します。激怒したルシラはコンモドゥスの暗殺を企てますが、失敗に終わります。

リヴィウスは単身ローマに潜入し、コンモドゥスと対峙しようとしますが、元老院はコンモドゥスに鞍替えし、リヴィウスとルシラは捕らえられます。コンモドゥスは、ルシラとリヴィウスの処刑を決定しますが、リヴィウスとの決闘を許します。この決闘でリヴィウスが勝利し、コンモドゥスは命を落とします。

リヴィウスはルシラを救出しますが、元老院からの皇帝の推戴を拒否します。軍と元老院議員が金銭を巡って争う中、リヴィウスはルシラと手を携え、物語は幕を閉じます。

映画の見どころは、なんといってもその壮大なスケールです。 数多くのエキストラや精巧なセット、そしてディミトリ・ティオムキンが作曲した劇伴音楽は、映画に圧倒的な迫力を与えています。ティオムキンの音楽は第22回ゴールデングローブ賞作曲賞を受賞するなど高く評価され、映画の成功に大きく貢献しました。

ただし、この映画は史実を完全に反映したものではありません。アウレリウス帝の死因やコンモドゥスの出自、ルシラの役割など、史実と異なる描写が多く見られます。歴史的な正確性よりも、ドラマ性を重視した演出であると言えるでしょう。それでも、ローマ帝国の興亡という壮大なテーマと、迫力ある映像、そして名音楽によって、多くの観客を魅了した作品として記憶されています。

映画は、単なる歴史ドラマにとどまらず、権力闘争や人間の欲望、そして愛と犠牲といった普遍的なテーマを描いています。衰亡していく帝国の中で、それぞれの登場人物が葛藤し、生き抜こうとする姿は、現代の私たちにも多くの示唆を与えてくれます。

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