ロールス・ロイス RB.203 トレント

RB.203 トレントエンジンの概要

RB.203トレントは、ロールスロイスが独自のプライベートベンチャーとして開発したターボファンエンジンです。このエンジンは、イギリスの航空機メーカーが手掛けたもので、航空機のパフォーマンスを大幅に向上させることを目指しました。RB.203は、従来のエンジン技術にはない新しい機能を持つことから、航空宇宙分野における重要なマイルストーンと位置付けられています。

開発の背景

RB.203トレントは、アフターバーナー付きの小型超音速ターボファンエンジンであるRB.172およびチュルボメカT260アドーアを基盤に、低圧系を追加した世界初の3軸式ターボファンエンジンです。このエンジンは、推力を9,980 lbf（44.4 kN）に設定し、既存のエンジンであるスペイを置き換えることを目的としていました。実際、RB.203はRB211の前身ともされ、航空機エンジンの進化に寄与する重要な役割を果たしました。

技術仕様

RB.203の設計は、バイパス比が8、静止推力が5トンクラスの中型機を対象としていました。そのため、日本航空機製造のYS-33やフェアチャイルド228、ホーカー・シドレーHS.136、コンベア660といった機体に搭載される計画がありましたが、最終的には予算の制約などから計画は実現しませんでした。

製作された5基のエンジンは、さまざまな試験に使用されました。この開発の基礎研究は、後に強化バージョンとなるRB.207を経て、さらに革新的な技術の採用につながりました。

技術革新と課題

RB.203は、ファンブレードに複合材料を導入し、可変静翼の廃止、完全にシームレスなアニュラー燃焼器の実現、プレーンメタルベアリングの採用といった革新的な設計が特徴です。これらの技術革新により、初の実用3軸式ターボファンであるRB.211が誕生しました。しかし、複合材製のファンブレードについては、バードストライク試験での失敗が発覚し、開発は難航しました。この結果、資金繰りが厳しくなり、ロールスロイスは管財人の管理下に置かれる事態となったのです。

結果と影響

エンジンの開発が進まなかったことは、ロッキード トライスターなどに搭載される予定だったエンジンの開発にも影響を与えました。最終的にはロールスロイスが国有化され、その後に自動車部門と分離されることになりました。

専門的仕様

RB.203の技術的特性は以下の通りです：

• - 形式: 3軸式ターボファン
• - 全長: 82.2インチ（208.8 cm）
• - 直径: 38.7インチ（98.3 cm）
• - 乾燥重量: 1,751ポンド（794 kg）

構成要素

• - 圧縮機: 1段ファン、4段中間圧力、5段高圧
• - 燃焼器: アニュラ型
• - タービン: 単段高圧、単段中間、二段低圧

性能

• - 推力: 9,730ポンド（44.2 kN）
• - 全圧縮比: 16:1
• - バイパス比: 3:1
• - 空気流量: 300ポンド/秒（136 kg/s）
• - 推力重量比: 5.55:1

まとめ

このように、RB.203トレントエンジンは航空機エンジン技術のビジョンを具現化した製品であり、その開発過程における技術的挑戦と革新が今後の航空機エンジン技術に大きな影響を与えることとなりました。

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