ロールス・ロイス・シルヴァーレイス

ロールス・ロイス シルヴァーレイス：戦後の高級車とその歴史

ロールス・ロイス シルヴァーレイスは、1947年から1959年にかけて製造された、同社を代表する高級車の1つです。第二次世界大戦後の経済状況や、生産拠点の変更といった背景を反映したモデルであり、その歴史と特徴は、戦後の自動車産業の一端を垣間見せてくれます。さらに、1977年から1983年には、シルヴァーシャドウIIをベースとしたシルヴァーレイスIIも登場しています。

シルヴァーレイス（初代）

開発背景と設計

第二次世界大戦後、ロールス・ロイスはダービー工場の老朽化と、クルーの新工場への移転を機に、自動車生産体制の再構築に着手しました。クルー工場はボディー製作部門を備えており、その技術を活かして、ベントレー・マークVIをベースとした新しいモデルが開発されました。シルヴァーレイスは、このベントレー・マークVIをロングホイールベース化したモデルと言えるでしょう。ただし、マークVIとは異なり、ロールス・ロイス伝統の独立コーチビルダーによるボディー製作が採用されました。

レイスと比較すると、いくつかの点で簡素化された設計が見られます。しかし、これは単なるコスト削減ではなく、戦後の経済状況や材料調達といった現実的な制約を反映した結果であり、その基本設計は堅牢かつ信頼性の高いものでした。ファントムIVが一般販売されなかったことから、1959年にファントムVが登場するまで、事実上のロールス・ロイスの最高級車種としての地位を維持しました。これは、戦後の経済状況により運転手付きの高級車を必要とする顧客層が減少したことに対応した措置でした。1949年のシルヴァードーン、1955年のシルヴァークラウドといったモデルが登場する中、シルヴァーレイスは1959年まで生産され続け、ショートホイールベース版とロングホイールベース版を合わせて1,783台が製造されました。

機構と性能

エンジンは直列6気筒、当初は4,257ccでしたが、後に排気量が拡大されました。レイスと比較すると、シリンダーヘッドやクランクケースなどの材質変更、バルブ機構の簡略化などが行われ、コスト削減と信頼性確保の両立が図られました。トランスミッションはシンクロメッシュ付きのヘリカルギアタイプ、サスペンションはダブルウィッシュボーンと半楕円リーフスプリングを採用していました。ブレーキシステムは、一部油圧式に変更されています。

1951年と1955年には、オートマチックトランスミッションやパワーステアリングの準備として、エンジンの排気量が拡大されました。また、1952年には4速オートマチックトランスミッションがオプションで提供され、1956年にはパワーステアリングがオプションに追加されました。

日本におけるシルヴァーレイス

日本には、いくつかの著名なシルヴァーレイスが存在しました。駐日英国大使が使用した車両、アサヒビールに贈与された車両などが知られており、これらは、戦後の日本における高級車の歴史を語る上でも貴重な存在と言えるでしょう。また、宮内庁が御料車として購入し、昭和天皇のためにシートの高さが調整された車両も存在しています。

シルヴァーレイスII

シルヴァーレイスIIは、1977年にシルヴァーシャドウIIのロングホイールベース版として登場しました。ホイールベースを延長し、後部座席の快適性を向上させました。運転席と後部座席の間に仕切り壁を取り付けるなど、リムジンとしての用途に重点を置いた設計が特徴です。基本的なメカニズムはシルヴァーシャドウIIと共通ですが、よりフォーマルな用途に特化したモデルとして位置づけられていました。1980年にはシルヴァースピリット/シルヴァースパーが登場しましたが、シルヴァーシャドウII/シルヴァーレイスIIは1983年まで併売されました。

参考文献

『外国車ガイドブック1977～1984』日刊自動車新聞社
高島鎮雄『世界の自動車-22 ロールス・ロイス ベントレー - 戦後』二玄社
* 『ワールド・カー・ガイド27ロールス・ロイス&ベントレー』ネコ・パブリッシング

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