ワタボウシタマリン

ワタボウシタマリン (Saguinus oedipus)

ワタボウシタマリンは、オマキザル科タマリン属に分類される小型のサルで、コロンビア北西部に生息しています。その特徴的な外見と社会的な行動様式で知られていますが、同時に深刻な絶滅の危機に瀕している種でもあります。別名ワタボウシパンシェとも呼ばれます。

分布

ワタボウシタマリンは、コロンビア北西部の限られた地域にのみ分布しています。この地域は熱帯雨林が広がる地域ですが、森林破壊の影響を受けて生息地が縮小しています。

形態

ワタボウシタマリンは、体長24-30cm、体重0.4-0.6kgほどの小型のサルです。その最大の特徴は、頭頂部から肩にかけて伸びる白い冠毛です。この冠毛が、和名や英名（Cotton-top＝綿の前髪）、独名（Lisztaffe＝作曲家フランツ・リストのように見える）の由来となっています。顔は短い体毛で覆われており、顔や耳介の皮膚は黒色で、耳介には毛がありません。頸部から肩にかけては明褐色、背面は黄褐色や灰黄色、腹面や四肢は白や黄白色をしています。尾は基部とその周辺が赤橙色や褐色で、先端は黒色です。

生態

ワタボウシタマリンは、熱帯雨林、二次林、疎林などに生息する昼行性のサルです。8-10ヘクタールの行動圏内で、主にペアと幼獣からなる1-19頭の家族群を形成して生活します。行動圏内には、幼獣や他の群れから侵入した若い個体からなる群れも存在することがあります。食性は動物食傾向の強い雑食で、昆虫、樹脂、花、果実などを食べます。
繁殖形態は胎生で、1回に2頭の幼獣を年に2回に分けて産みます。オスも育児に参加することが知られています。

人間との関係

種小名のoedipusは、ギリシャ神話のオイディプス王に由来します。仏名およびタマリン属でも本種のみに用いられる英名、別名のpincheはBuffonが命名して広めたとされ、ペルー北東部でのサルの呼称に由来します。

ワタボウシタマリンは、生息地の破壊や過去のペット用・実験用の乱獲により、生息数が激減しています。野生の生息数は1000匹以下と推定され、「世界で最も絶滅の危機に瀕している霊長類25種」の1種に数えられています。そのため、国際的な保護活動が行われており、生息地の保全や繁殖プログラムなどが実施されています。

ワタボウシタマリンの保護は、生物多様性の保全において重要な課題です。彼らの未来を守るためには、生息地の保全、密猟の防止、そして人々の意識向上が不可欠です。

参考文献

• - Nowak, R. M. (1999). Walker's mammals of the world. (6th ed.). Baltimore: Johns Hopkins University Press.
• - Rylands, A. B., Mittermeier, R. A., & Rodríguez-Luna, E. (2003). An assessment of the conservation status of the Neotropical primates. Neotropical Primates, 11(3), 81-93.

関連項目

• - オマキザル科
• - マーモセット亜科
• - タマリン属

外部リンク

• - ワタボウシタマリン - ARKive
• - ワタボウシタマリン - IUCN Red List

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