ワトキンス・レポート

ワトキンス・レポートの概要

ワトキンス・レポートは、1956年8月8日にアメリカのラルフ・J・ワトキンスを中心とする調査団が日本の道路事情について作成した重要な文書です。この報告書は、名古屋から神戸までの高速道路建設の調査を目的として日本国政府によって依頼されました。

背景

日本政府は名神高速道路を含む高速道路の建設にあたり、世界銀行に資金援助を求めました。この調査には、経済学者であるラルフ・J・ワトキンスが団長を務める6名の専門家が参加しており、調査団は1956年5月から約80日間日本国内を調査しました。彼らによる報告書は、特に当時の日本の道路体系の問題点を強調しており、国際競争力の低下を示唆しています。

日本の道路事情

ワトキンス・レポートは、日本の道路網を劣悪とし、経済発展に与える影響を厳しく指摘しました。特に、道路の不備が輸送コストを押し上げ、結果として経済成長を妨げていると述べています。また、調査団は名古屋と神戸を結ぶ高速道路の建設が急務であるとし、名神高速道路の重要性を強調しました。

提言

報告書では、道路網の改善のための具体的な提言がいくつか含まれています。その中でも、現在の道路整備五か年計画は不十分であり、生活水準の向上には更なる予算と努力が必要とされました。具体的には、税制改革や有料道路制度の導入が提言されており、これにより紀元前よりも早く道路整備が進むとされています。また、道路整備に対する予算をGNPの約2%に引き上げることが推奨されました。

道路特定財源制度

ワトキンス・レポートは、特に道路特定財源制度の設立を提言しました。これにより、道路整備のための安定した財源を確保し、長期的な計画的運営が可能になると考えられました。

政府の対応

日本政府は、ワトキンス・レポートを受けて道路整備に多大な投資を行い、その結果、道路への支出は1956年のGNPの約0.7%から、10年余りで2%を超える水準に達しました。この増加は、道路網の整備を促進し、日本の経済成長に寄与しました。

影響と評価

ワトキンス調査団が再度来日した1969年には、当時の道路網の発展を目の当たりにし、驚きをもって評価されたと言われています。また、報告書に基づいて、日本道路公団は外国の技術者を呼び入れ、効率的な道路建設が進められました。技術指導を受けた日本の技術者たちは、その後全国各地の道路構造を改善するために活躍しました。

ワトキンス・レポートは、日本の戦後の道路整備において重要な役割を果たし、その後の政策形成に大きな影響を与えることとなりました。特に、実業家や政治家らが道路建設の必要性を訴えた背景も忘れてはならず、これらが融合した結果として、町と町を結ぶ道が急激に改善されていったのです。

参考文献

• - 浅井建爾『道と路がわかる辞典』（初版）
• - 武部健一『道路の日本史』
• - 峯岸邦夫編著『トコトンやさしい道路の本』

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