ワトソン級車両貨物輸送艦

ワトソン級車両貨物輸送艦

アメリカ海軍が運用する大型車両貨物輸送艦の一群に、ワトソン級（Watson class vehicle cargo ship）がある。これらは、大規模かつ迅速な車両・装備品の輸送を目的とした大型中速ロールオン・ロールオフ船（LMSR）として設計された戦略的輸送艦である。

開発と就役

本級は、カリフォルニア州サンディエゴに位置するナショナル・スチール・シップビルディング社（National Steel and Shipbuilding Company, NASSCO）によって建造された。合計8隻が計画され、1998年から2002年にかけて順次就役した。就役当時、ワトソン級はガスタービンエンジンを主機関とする艦船としては世界最大の規模を誇っていた。同時期に運用が始まった近似クラスのボブ・ホープ級（こちらはディーゼルエンジン推進）と共に、ワトソン級はアメリカ海軍の海上兵力投射能力、特に大規模な車両・装備の長距離輸送能力を劇的に向上させた重要な存在である。

輸送・積載能力

ワトソン級の最大の特徴の一つは、その巨大な積載能力にある。艦内には6層にわたる広大な車両甲板が設けられており、総面積は約393,000平方フィートに及ぶ。この広大なスペースを活用することで、主力戦車であるM1エイブラムスを含む、およそ1,000台もの各種車両や関連装備品を一括して輸送することが可能となっている。これにより、遠隔地への大規模な陸上部隊の展開を迅速に行うことができる。

荷役機能

効率的な車両の積み下ろしを実現するため、ワトソン級は優れた荷役設備を備えている。車両は自走して乗降できるよう、艦尾に加えて船体両舷にも大型のランプが設置されている。特に艦尾ランプは、必要に応じて船体側面に展開することも可能であり、多様な港湾施設や状況に対応できる柔軟性を持つ。また、車両の自走が難しい場合や、コンテナなどの物資を扱うために、強力な110トン吊りのクレーンが2基装備されている。これらの設備により、比較的荒れた海象であるシーステート3の状況下でも荷役作業を行う能力を持つとされる。

ヘリコプター甲板

艦橋の前面には、大型のヘリコプターが発着できるヘリコプター甲板が設けられている。これにより、人員や軽装備の迅速な移送、偵察などの任務に対応可能である。ただし、揚陸艦のように本格的な航空運用を前提としたものではなく、ヘリコプターの整備や管制を行うための専門的な設備は備えていないため、限定的な使用に留まる。

同型艦

ワトソン級は以下の8隻で構成される。

• - USNS Watson (T-AKR-310)
• - USNS Sisler (T-AKR-311)
• - USNS Dahl (T-AKR-312)
• - USNS Red Cloud (T-AKR-313)
• - USNS Charlton (T-AKR-314)
• - USNS Watkins (T-AKR-315)
• - USNS Pomeroy (T-AKR-316)
• - USNS Soderman (T-AKR-317)

関連事項

これらの艦船は、アメリカ海軍の主要な輸送資産として、世界各地の紛争地帯や災害支援活動において重要な役割を担っている。

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