ワラジムシ

ワラジムシ（草鞋虫）

ワラジムシは、等脚目ワラジムシ亜目（Oniscidea）に分類される陸生（一部を除く）の甲殻類の総称、あるいはそのうちの一種である Porcellio scaber を指す名称です。その姿は身近な環境でよく見られますが、同じ等脚類のダンゴムシとは異なり、刺激を受けても体を球状に丸めることはありません。

特定の種としてのワラジムシ (Porcellio scaber)

種としてのワラジムシ（Porcellio scaber）は、代表的なワラジムシの一つです。成体の体長は約12mm程度で、体は灰色がかった褐色をしています。上から見ると、頭部から腹部にかけて緩やかに細まる楕円形をしており、全体的にやや平たい体つきが特徴です。背中はなだらかに盛り上がっています。

体の構造は、頭部、胸部、腹部の三つの部分に明確に分かれています。頭部からは比較的発達した一対の第2触角が前方に伸びています。胸部は体全体の約8割を占める大きな部分で、7対の体節とそれぞれに付属する歩脚（計14本）を備えています。腹部は幅が狭く、体の後端には短い角のように突き出た一対の尾肢があります。

Porcellio scaber はヨーロッパが原産地と考えられていますが、現在では世界中に広く分布しています。日本では本州の中部以南から沖縄にかけて見られます。人家の周辺など、比較的乾燥しにくい石の下や落ち葉、草の根元などの地面で普通に観察できます。

広義のワラジムシ

広義には、ワラジムシという名称はワラジムシ亜目全体、あるいはその中で特定のグループ（主にダンゴムシ類やフナムシ類の一部）を除いた多くの種を指す総称として用いられます。ワラジムシ亜目には非常に多様な種が含まれており、主に陸上で生活する甲殻類としては最大のグループです。

ワラジムシ亜目は以下の科に分類される多くのグループを含んでいます。

フナムシ科 Ligiidae
ナガワラジムシ科 Trichoniscidae
ヒゲナガワラジムシ科 Olibrinidae
ウミベワラジムシ科 Scypacidae
ヒメワラジムシ科 Philosciidae
ホンワラジムシ科 Oniscidae
ハヤシワラジムシ科（トウヨウワラジムシ科） Trachelipidae
ワラジムシ科 Porcellionidae
コシビロダンゴムシ科 Armadillidae
オカダンゴムシ科 Armadillidiidae
ハマダンゴムシ科 Tylidae

上記のリストのうち、コシビロダンゴムシ科、オカダンゴムシ科、ハマダンゴムシ科に属する種はいわゆる「ダンゴムシ」として一般に知られています。また、フナムシ科には海岸で見られるフナムシや森林に生息するヒメフナムシなどが含まれます。これらのダンゴムシ類とフナムシの一部を除いた、ワラジムシ亜目の多くの種が広義の「ワラジムシ」と呼ばれています。ただし、研究分野などで「ワラジムシ相」といった場合、通常はダンゴムシ類も含めたワラジムシ亜目全体の動物相を指すことが多いです。

研究状況

ワラジムシ亜目の多様性は非常に高く、現在、世界中で約1500種が確認されています。日本国内でも、公式には約100種が知られていますが、実際には400種以上が生息している可能性も指摘されています。1980年代頃までは日本におけるワラジムシの研究はあまり進んでいませんでしたが、近年になって研究者が増え、多くの新種が発見され、分類や生態に関する知見が蓄積されつつあります。

関連項目

ダンゴムシ

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