ワルシャート式弁装置

ワルシャート式弁装置は、1844年にベルギーの鉄道技術者ワルシャートによって発明された蒸気機関車用弁装置であり、最も一般的な機構の一つです。ドイツでは1849年にホイジンガーが独自に開発した弁装置として、ホイジンガー式弁装置とも呼ばれています。

歴史

19世紀の蒸気機関車では、スチーブンソン式弁装置が広く使用されていました。特許の関係もあり、ワルシャート式は当初あまり普及しませんでした。最初に採用したのは連接式機関車でした。北米では、モアソンボギー式機関車が最初にワルシャート式弁装置を採用しました。

イギリスでは、単式フェアリー式機関車が1878年にパリで登場し、1883年からスウィンドンマルボロ&アンドーバー鉄道で働き始めました。当時、その機関車は非常に小さく見えたため、誰もその弁装置搭載機が大量の石炭を消費するとは予想しませんでした。

20世紀に入ると、ワルシャート式弁装置は、競合するベーカー式弁装置を圧倒し、ヨーロッパから北米にかけて大型機関車に最も多く使用される弁装置となりました。

特徴

ワルシャート式弁装置は、その構造のシンプルさと信頼性の高さから、広く採用されました。スチーブンソン式弁装置と比較して、以下の利点があります。

保守の容易さ: 部品点数が少なく、構造が単純なため、保守が容易です。
高出力: 高速運転に適しており、大型機関車の出力を向上させることができます。
調整の容易さ: 弁のタイミング調整が比較的容易であり、機関車の性能を最適化できます。

構造

ワルシャート式弁装置は、主に以下の部品で構成されています。

偏心クランク: クランク軸に取り付けられ、弁の動きを制御します。
加減リンク: 偏心クランクの動きを弁ロッドに伝えます。
弁ロッド: スライド弁を動かします。
* スライド弁: シリンダーへの蒸気の流れを制御します。

スチーブンソン式弁装置との比較

スチーブンソン式弁装置は、19世紀に広く使用された弁装置ですが、ワルシャート式弁装置と比較して、構造が複雑で保守が困難です。また、高速運転には適しておらず、大型機関車には不向きでした。

ワルシャート式弁装置は、これらの欠点を克服し、20世紀の大型蒸気機関車の発展に大きく貢献しました。その信頼性と効率性から、多くの鉄道会社で採用され、蒸気機関車の歴史において重要な役割を果たしました。

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